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編集長インタビュー

経営経験がある62歳の小僧として農業にかかわっていきたい

昆 おっしゃる通り、日本は特殊ですよね。実は平松会長と本誌読者の考え方はほとんど一緒で、農家という暮らし方を選んだのではなく、ビジネスとして農業を営むことを選んだ人たちなんですよ。

平松 農業経営者の方を「羨ましいなぁ」と思うのは、僕は人生の前半はサラリーマン、後半は雇われ社長という形で仕事人生を送ってきたわけです。そして、ようやく2年前に、小僧comという自前の会社を持った経営者になった経緯があります。でも、農業経営者の方は、規模の大小はあるけれど、みんなそれぞれ自分の責任で経営を行なっているじゃないですか。

昆 ただ、農家の場合は、農村に産み落とされただけにすぎず、それゆえに、農業経営者と呼ばれる人たちの中でもサラリーマン上がりの経営者と比べると、甘えのようなものがあるかもしれません。それでも、経営者として頭角を現す人たちは現状を否定して、絶えず自己変革をしようという意思をもって働いています。自分の存在理由は何か、自分が必要とされる役割は何かということを問いながら。その意味では、平松会長も農業経営者も同じ感覚だと思います。

 ところで、近年、農業現場に足繁く通っていらっしゃるそうですが、そもそも農業への関心をお持ちなった理由はありますか?

平松 僕には、第一次産業を大切にしない国は滅びてしまうという持論があります。僕は10年以上米国で住んでいましたし、仕事でヨーロッパにも行っただけに、その思いを強く持っています。それと「ものづくり」の観点ですよね。ものづくりが大事という考え方は、最近の日本社会では、なかなか大切されなくなってきている感があります。

昆 平松会長はソニー出身ですから、ものづくりに対する思いは強いのでしょうね。

平松 ええ。ですから、ものづくりの原点ともいえる農業に興味を持つようになりました。

 僕自身、日本の農業の行く末には多少なりとも危惧を抱いています。ただ、経営の視点で見ると、大きな可能性があるように思いますね。そして、昨今の食の問題全般を通じて国民が農業を改めて見直すようになっていますが、これを一過性のものにしてはいけないと思っています。

昆 本当の意味で国民の信頼を勝ち得るには、経営努力が不可欠ですが、農業界はこれまで手厚い保護を受けてきたこともあってなかなかその意識がないのも事実です。

平松 農業には競争がなかったわけですものね。しかし、産業が強くなる、しかもグローバルな意味で強くなるには、競争以外にありえない。たとえば日本の自動車産業、あるいはエレクトロニクス産業を見ても、こんな小さな島の中に多くの会社がある。この中で競争、淘汰されて生き残っていくで、結果的にグローバルな競争力を身につけて成長できました。でも、保護されていればたとえ国内では生き残っても、成長はできずに新しい人材が入ってこない。新しい血が入ってこない産業は、危惧されますよね。

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