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シリーズ TPP特集

国際法の専門家が語る、ISDS条項の実態~(6)「仲裁事例(下)」 京都大学大学院法学研究科 濵本正太郎教授

  • 濵本正太郎
  • 2013年05月27日
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日米による事前協議の合意で日本のTPP交渉への参加が事実上決定した中、国内の調整に当たって最大の懸案事項となっている一つにISDS条項がある。いわゆる巷間で噂される「毒素条項」。国民の安全を守ってきた各種の規制が、外国企業の訴えによって緩和や撤廃させられる可能性があるというのだ。果たして実態はどうなのか? 国際的な投資の協定やその仲裁の事案に詳しい国際法の第一人者に話を聞いた。(取材・まとめ・窪田新之助)

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農業分野の仲裁事例はほとんどない

――掲載するWEBサイトは農業関係者の読者が多いので、ISDS条項に基づく農業分野の仲裁事例も教えてください。

それが、実はほとんどない。覚えているのは、アフリカ南部のジンバブエで発生した事例ですね。ある時にジンバブエ政府が、白人だけが持っている土地を取り上げるという法律を作ったわけです。これは歴史的な経緯もあって難しい問題ですが、白人の投資家にとってみればどう考えても納得できないので、ある投資家がジンバブエ政府に対して農地を返せと訴えたんです。

――歴史的に難しい問題とは?

ジンバブエはもともと英国の植民地ですが、植民地時代は白人が支配してきた。それが独立後も続いていたわけです。ただ、人口でいえば圧倒的に黒人が多く、国民の間には不満があった。それで、ある政権が政権浮揚のために、白人の土地だけを収用する法の施行に打って出たんですよ。

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