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農家発、肌につける農産物
「へちま水」は、1本120cc入りで500円。茶色い薬瓶に入った実にシンプルな商品だ。フタを空けるとへちま特有のちょっと青臭い香りが漂う。アルコールや香料は、一切入っていない。無農薬・無化学肥料栽培のへちまから採取した正真正銘「生の」へちま水である。
商品化に当たり、喜美さんたちが一番頭を悩ませたのは「薬事法」の壁だった。「へちま水」を化粧品とするには、殺菌のためにアルコールを添加しなければならない等、さまざまな規制がある。また、薬剤師を雇って専門のプラントを作るには、設備投資にも莫大な資金が必要だ。
これまで何度も薬事法を通して「化粧品」として販売することを検討したが、設備や資金的なことを考えると無理。けっきょく「へちま水」は、現在も化粧品でなく、生産者が作った「肌につける農産物」として流通している。
――どうしてアルコールを入れなかったんですか?
「アルコールは悪い菌も、いい菌も殺してしまうから。今もそれで一番悩んでいるんです」
ときに悪い菌がはたらいて、液が濁ってしまうことがある。そんなときはお客さんに返品してもらい、代替品を送ることにしている。それでも敢えてアルコールは入れない。製造する側もドキドキ、受け取る側も時には濁ることを覚悟の上で付き合わなければならない。実にデリケートな商品だが、それでも「ほしい」という人がいる。
20年来のつきあいで「これしか使えない」という人、生協経由で注文する人、中にはアトピーや敏感肌に悩んでいて、いろいろ試したけれど、既成の化粧品ではダメ、という人も少なくない。
たしかに商品の品質を安定させるには、アルコールを添加する方が楽なのかもしれない。でも、「アルコールのスッとする肌触りがイヤ」という人は意外に多いし、入れてしまったら「もう買わない」という人もいるだろう。
新しいお客さんから問い合わせがあるたびに、丁寧に製品の特性を説明し、納得の上で購入してもらうという販売スタイルで約20年。八彩耕房の「へちま水」は、年々販売本数を伸ばしてきた。
青臭くなくなったら使用ストップ
正真正銘、混じり気なしのへちま水だが、畑から採取した原液をそのまま瓶に詰めているわけではない。
9月中旬、8人のメンバーがそれぞれの畑で採取した原液を一端冷凍する。
注文がきたら、必要量に応じて自然解凍後、ろ過してゴミ等を取り除く。冷凍することで不純物が沈殿し、フィルターを通すと大腸菌などを取り除くことができる。さらに瓶詰めした後、58℃で30分間の低温殺菌にかける。
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