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新・農業経営者ルポ

危機を救ってくれたのは家族とお客様だけだった

しかし、鈴木は異業種の交流会に参加する中で、企業経営者などから贈答品を含めた精米の注文を受けていた。その量は限られたものであったが、それを通して商売とは何かを感じた。鈴木の商品の中に、地域の友人が作ったリンゴやモモなどが入っているのも、贈答品需要に応えるためだ。また、コメの小売に、これからのコメ生産者の生きる場所があることを感じ取った。

農作業互助会という社名は、現在の鈴木の事業を表すには適切でないかもしれない。作業請負の事業規模は相対的に小さくなり、コメ小売が事業の主体になっているからだ。

小売を本格的に始めるにあたって、付き合いを広げていたコメ業者などのツテを使い、5馬力の本格的業務用精米機も手に入れた。廃業する米店から割安で引き取ったのだ。

顧客のニーズに合わせて品種を組み合わせ、さらに新たな需要を創造すべく、低タンパク米などの機能米栽培とその商品化にも取り組み始めた。調整加工段階での混米は絶対に避けたい。現在、うるち米は「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「ミルキークイーン」のほか、低タンパクの機能米である「春陽」や「LGCソフト」など6品種を生産、精米している。さらに、生産者だからできる究極の差別化として、農業経営者仲間と組んで、自分たちだけのオリジナル品種の開発を目指しているという。

二家族の自作地と借地を合わせた約13haが、農作業互助会のコメ生産面積である。そのほか、作業を受けるお客さんに関しても、鈴木が指示する施肥管理をしてくれる人の分は、作業代金を現金ではなくコメで払ってもらうようにしている。そのコメなら鈴木たちが栽培するコメとの品質的な差が少ないからだ。兼業農家も収入が減少しているため、現金で払うより都合がよい。さらに、コメの市況が下がるにつれて、鈴木にコメを買ってくれという要望も増えている。ただ、コメの顧客を裏切ることはできない。品質次第で無原則な買い入れはしない。

大量のコメを一年間寝かして売る。その一部は現金で仕入れたものだ。コメの小売とは、資金繰りの苦しみだといってもよい。鈴木の場合、機械などの設備については、農林漁業金融公庫の資金がある。そのほかに3000万円程度の運転資金を民間金融機関から調達できれば、農業経営者は農協から解放されるという。各県の農協組織と金融機関との力関係の違いにもよるが、福島県の場合、民間の金融機関は農業にまったく力が入っていない。鈴木は、日立キャピタルに大いに助けられていると話す。今回新たに始めた餅と団子の加工所兼店舗「ままや」の創業に関しても、初期投資2000万円のうち、公庫が1600万円で、残りは日立キャピタルの融資を受けた。

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