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特集

メニューから考える農産物マーケティング(2) 惣菜篇・包丁とまな板のない「食生活」が農業に求めるもの

景気低迷が続き消費が落ち込んでいる。その影響は、高度成長期以降、右肩上がりで成長してきた外食産業にも影を落としている。しかし惣菜部門(弁当を含む)はそんな中でも堅調な伸びを示していて、昭和54年時で約1兆円だった市場規模も平成11年には約6兆6千億と6倍以上へと膨れ上がっている。その背景には、少子・高齢化、女性の社会進出(共働きの増加)、核家族化といった社会構造の変化があると言われる。衣服の洗濯・乾燥が全自動になったように、人々が食事の準備に掛ける時間や手間暇もどんどん減少してきている。
 そういった社会構造の変化に伴って、消費者が求める「惣菜」の姿も変わりつつある。かつて外食産業が提供する惣菜は、家庭料理に添えられる一品的なもの、あるいはお客さまが来たときや行事など特別な時に利用されるものとしての傾向が強かったが、現在の「惣菜」は日常の食事の中で「主食的」に利用されることの多い存在となってきている。

 そのバリエーションも中心的存在である和菜に加え、洋菜、中華、韓国、エスニックと広がりを見せており、コロッケやお寿司といった定番商品と共に、サラダ、揚げ物、煮物と普段の食卓で興せられる品物が増えてきている。また、「惣菜」は惣菜屋さんへ買いに行くだけのものではなく、惣菜店で「食べる」ということも、家庭へ「デリバリー」することも行われるようになってきた。その中に青果が組み込まれるといった複合的な業態へ変化している場面すらあり、惣菜産業は、新たな農産物販売や物流の可能性をも作り出し始めているのだ。

 日本人の食事のあり方は急速に変化している。包丁もまな板もない、調理器具のない家庭が現に出現している。程度の差こそあれ、そういった人たちのニーズが惣菜産業躍進の背後にはある。そしてその変化は農業のあり方に影響を与えずにはおかないはずだ。 今回の特集では、「惣菜」を通して「農産物マーケティング」のあり方を考える。


日本人の食の移り変わりと消費者が惣菜に求めているもの

女性の生活研究室 みかなぎりか
【著者プロフィール】1945年ハルピン生まれ。学習院大学文学部国文学科卒業。出版社・広告代理店を経て、1971年に編集プロダクション「株式会社SHICHI原宿セクション」を設立。1984年には消費者調査部門「株式会社女性の生活研究室」を設立し、現在は武蔵工業大学経営工学部非常勤講師、東京誠心調理専門学校講師、社団法人日本能率協会審査登録センター運営委員、日本ヒーブ協議会会員等を務める。企業と消費者の間にあって、よりよい生活築くことをライフワークとしている。著書に「住まいの汚れを取る100の秘訣」(光書房)、「姑にきけない家政学」(光書房)、「トクする暮らしの大研究」(光書房)、「働く主婦が食品マーケットを動かす」(日本経済新聞社)がある。


 スーパーマーケットが惣菜に力を入れ始めたのは、おそらく4年ほど前に遡る。発端は、1996年にアメリカのフードマーケティング“インスティテュートの会長”ハモンズ氏の提唱「すべての世代は食事の準備にかける時間を前の世代の半分にする」であった。それ以来、アメリカの食品業界はレストラン並のテイクアウトフードを提供しようとやっきになり、アメリカを向いていた日本の食品業界はアメリカに見習え・追い越せと、すぐさまその思想を取り入れたのである。デパートには高級料理店が進出し、スーパーマーケットでは惣菜売場が拡大した。最初は冷ややかに見ていた消費者たちも、今ではすっかり惣菜を買って食事をすることに抵抗がなくなったように見える。さて、日本の食生活はどこへ行くのだろう。

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