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特集

メニューから考える農産物マーケティング(2) 惣菜篇・包丁とまな板のない「食生活」が農業に求めるもの

 いっぽう百貨店の惣菜売場用の商品では、売場の政策的な売価にも影響されるため極端に高級な食材を使って高い価格設定は出来ない。価格はリーズナブル(値ごろ)でないと売れない。

 たとえば千葉房総産の菜の花を使った菜の花辛し和え(100g300円)、野菜うま煮(1パック500円)、さつまいもリンゴ煮(150g250円)、きんぴら牛蒡(90g250円)、かぶと若鳥団子の煮物(1パック390円)などのメニューがあり、いずれも季節感を感じさせるのが野菜の役割だ。

 この百貨店惣菜も最近では一人暮らしの女性客が増えたことからケースの一角に「個食コーナー」と銘打った小さなパック詰め商品を10品程揃え、全種類170円で売るような売り方が定着している。

 季節の弁当には旬の野菜が入る。たとえば春の弁当メニューに「淡雪」1900円があるが、これには菜の花の天ぷらや、ご飯の上にツクシの煮ものや塩漬けの桜花が添えられている。たらの芽も使われ、タケノコの土佐煮が入っている。そしてデザートとしてフレッシュのイチゴが添えられている。

「このイチゴはとよのかです。フルーツは築地の定松青果からの仕入れですが、これはとよのかの1箱20粒入りと決めて仕入れています」(仲田さん)

 長年にわたり工場長をつとめた仲田文吉さんは近々後任にバトンタッチするが、今後の惣菜作りをこう語ってくれた。

「本来野菜は季節のものでしたから特定の時期に特定のものしか使えないのが当たり前だったんですよ。ですが商品がいかに均質に作られていても、食材の出来不出来で味が左右されてしまいます。お客様に提供する弁当や惣菜が、買うたびに味が変わったのでは信用されませんからね。お客のイメージに見合った食材を選ぶことがどうしても必要になる。安いからといって輸入ものに頼るとお客が直にそっぽを向きますよ。これからの弁当作りでは産直の質の良い野菜や果物を上手に使って、品質面ではっきりとした差別化を図ることが問われるでしょうね」


惣菜用の野菜を考える 流通ジャーナリスト・小林彰一


 惣菜の原材料用の野菜とは、どういう性格、概念のものであろうか。一般的には規格が一定で単価も安く安定供給されるもので、加工調理もしやすい、というところだろう。これらは業界では業務加工向けといわれ、多くは2L、3L以上の一般需要向けではないものを指す。

 俗に言うこれらの“大玉”は、一般向けで中心となるL・Mより安く、サイズが大きいために加工しやすい(皮を剥いたり、切ったりする上で効率がいい)からだ。業務用食材の代表的な品目であるジャガイモ、タマネギやキャベツ、ダイコンなどがそれに当たる。

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