ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

メニューから考える農産物マーケティング(2) 惣菜篇・包丁とまな板のない「食生活」が農業に求めるもの

【ジャガイモ】

 大玉で芽の浅い男爵が万能であるが、煮崩れを嫌う関西ではメークも重要。また、小芋の素揚げや煮込みには西の二科性の新ジャガが向く。粉ふきイモには農林1号に根強いファンがいるし、揚げ物ならトヨシロだという向きもある。ポテトフライはどうしても米国のラセットバーバンクにかなわないと思われがちだが、マッシュやジャガバタなどに向いている男爵の「揚げじゃが」なるメニューで人気を博す外食店もある。肉じゃがは、好みや地域性で男爵派とメーク派とに分かれるが、農林1号のあのシットリ感が忘れられないという高齢者が多い。


【キュウリ】

 生産量が圧倒的に多くて棚もちもいい現在のブルームレスが、結果的には安定的に割安で入手できる。しかし、この系統は食味面から評価する業務用需要者は少ない。いちばん気にするのは漬物業界で、漬けた後の食感からするとブルームにかなわないという。酢の物でも酢や他の材料となじみにくい。本場韓国のキュウリのカクテキやキムチなどではそれ以前の黒イボキュウリでなくてはおいしくない、ともいう。もっともキュウリの表面に切れ目を入れて飾りにするモロキュウを出す店では、ブルームレスが加工しやすいとはいうのだが…。


【ナス】

 ナスは周年ある千両系が中心だとはいえ、漬物業界には長ナスの周年供給を望む向きが強い。そのために、国産長ナスが品薄になる時期に韓国産を使うところもある。また、ナスの辛子漬けはその食味からの相性から全国各地にあるが、多くの場合には丸ナス系など身の締まった固いナスとの取り合わせが圧倒的である。ナス一般に油との相性がいいが、とりわけ米ナスなどはその代表格である。


【トマト】

 多くの場合は、付け合せや添え物的なトマトであるために、どこにでもある桃太郎やニミトマトで充分だ。しかも“完熟”していないほうがいい。しかし食味志向のメニューではフルーツトマト系がご指名である。一方、調理加工用としては輸入品か最近ようやく国産でも登場した調理加工用トマトにシフトしつつある。イタリア料理系では、調理用の酸味が味を調える上で重要であるし、輪切りで肉料理と付け合せる場合はローマ種など細長くて大ぶりのトマトが効率的(輪切りが何枚も取れる)だという。


【サツマイモ】

 業務用には圧倒的に太くて大きい規格が指名される。しかもホクホクした金時系がその中心である。確かに天ぷらなどの揚げ物にはホクホク系のものが食味的にもいいし、油の切れもいい。しかし、焼き芋になると紅あずまのようなネットリ系が東日本では支持が高い。大学イモにはまず素揚げをして砂糖で煮からめることもあり、ホクホク系が中心だ。


【長イモ】

 長イモは粘度の低いものはお好み焼きに向くが、自然薯や大和芋は出汁でのばしてトロロ汁にする、という方程式が業界にはある。しかし、一般にはトロロ汁は長イモで作らせる方が、簡単であるし(すり鉢で伸ばす必要がない)消費量の拡大につながる。また、お好み焼きについても、長イモだけで(小麦粉はつなぎ程度)作らせる仕掛けが必要である。なによりもそれがおいしいからである。また、長イモをすりおろしてチーズをのせオーブンで焼くメニューや輪切りにして鉄板で焼くなど、火を通す料理が静かな人気だ。なお、大和イモはすりおろしてから冷凍がきくため業務用に根強い支持がある。

関連記事

powered by weblio