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江刺の稲

「表示」の嘘、「商売」の嘘、「正義の嘘」、その退廃の果てに

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第73回 2002年03月01日

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「雪印食品事件」以後、食品流通業界の“嘘”が一気に白日の下に晒され始めた。その後の経過を見るとき、これは我が国の食品の生産・流通・小売における“信用恐慌”とでも言うべき事態に発展するのではないかと本誌は恐れている。それは我が国の農業と食の業界を大変革させるために避けては通れぬ時代の波ではあるが。今年度決算期に囁かれる様々な金融不安、4月に始まるペイオフ、それらが経済恐慌どころか日本社会そのものを恐慌に導くことにもなりかねないからだ。
「雪印食品事件」以後、食品流通業界の“嘘”が一気に白日の下に晒され始めた。その後の経過を見るとき、これは我が国の食品の生産・流通・小売における“信用恐慌”とでも言うべき事態に発展するのではないかと本誌は恐れている。それは我が国の農業と食の業界を大変革させるために避けては通れぬ時代の波ではあるが。今年度決算期に囁かれる様々な金融不安、4月に始まるペイオフ、それらが経済恐慌どころか日本社会そのものを恐慌に導くことにもなりかねないからだ。

 発端は雪印食品(株)関西ミートセンターによる「牛肉詰め替え」の露見だった。“狂牛病騒ぎ”で売れ残る未検査国産肉の対策として設けられた買い取り制度を悪用し、補助金を騙し取ろうとした詐欺事件である。その後、牛肉の産地やブランド詐称(表示の嘘)が告発されるのに次いで、いよいよ海外産農産物の産地詐称やリパックの横行も報道されるようになった(マスコミも知りながらこれまで報道してこなかった)。

 これらの事件の結果、スーパーでの米や野菜の安売りが減り、低迷する野菜市況にも上向きの条件をもたらすかもしれない。まともな直売所や農家からの産直には今以上に人気が集まることもあるだろう。しかし、農業経営者もまた少なからずの影響を受けることは避けられないのだ。真価を問われるのはその後だからである。

「ほら見ろ、悪いのは商売人であり、そのために真面目な農民や農業界がひどい目に合ってきた」と言う人々がいるかもしれない。たしかに、あくどい商売人や詐欺師も世の中にはいる。大きなバイイングパワーを背景に横暴を極める農産物需要企業が存在し、そのために歯軋りをしてきた農業経営者や卸業者がいることも事実だ。

 そして、現在の状況、様々に露見しつつある卸業者による産地や原料表示の“嘘”の原因を作った大規模スーパーや外食業者の責任は重い。彼らは社会的影響度が大きく、最終の“売る責任”を背負う立場にいるからだ。大規模スーパーが卸業者に対して価格要求だけで品揃えを求める結果、産地表示を偽る卸業者が出てくるのも想像がつくことではないか。それどころか、閉店後に、その日に高い値を付けて売れ残った○○産の「有機野菜」を翌日リパックして××産の野菜に化けさせるべくパートのオバサンたちを働かせたことは無い、と断言できるスーパーの店長はどれだけいるだろうか。事件が露見して慌てて雪印製品を棚から外してみせるスーパーのあざとさとは、彼等の商売としての退廃をこそ示しているのだ。

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