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【村井信仁・67歳からの新規就農日記】
秋播き小麦のための播種床造成
- 農学博士 村井信仁
- 第2回 2002年03月01日
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ドイツ映画にみる播種床造成の重要性
大分前にドイツに行った時のことである。甜菜製糖の関係者に甜菜のための理想的な播種床造成技術とはと尋ねたら、丁度よい映画があると見せてくれた。
最初に小麦畑が出てきて、いかに輪作が大切であるかを訴えている。次いで、小麦をコンバインで収穫して、その後をチョッパーを掛けて麦稈を細断し、均一に分散している。
麦稈を腐食しやすくするための措置として、次に出てきたのはマニュアスプレッダである。禾本科を栽培し、その藁稈を腐食しやすくするためにチョッパーで細断しているのであるから、次は硫安などを発酵菌のために窒素源として散布する程度であると考えていたので意外であった。
説明では、窒素源を散布するのは基本である。硫安等でも差し支えないが、理想的には堆厩肥を散布することであるとしていた。つまり、堆厩肥は麦稈を腐食させる為の窒素源であることはもちろんのこと、発酵菌の散布であり、かつ、作物によって収奪された微量要素の補填であるのだそうである。
いかにもドイツ人らしい緻密な土づくりの手法である。禾本科を栽培しているのであり、その藁稈を戻すのであるから、それで充分ではないかと考えるが、それは甘い考え方のようである。麦藁だけでは有機物は不足であるとしているのかもしれない。
その次に出てくる機械が浅起し用のボトムプラウである。スタブルカルチベータでも差し支えないそうであるが、表層を浅く耕起する。甜菜のためには深耕と聞いていたのでこれも意外であった。そこで曰く、有機物は年内に腐食させておくのが基本であり、そのためには地温の高い表層にとどめておいて、腐食を促進するのが正しいとしていた。
つまり、急激に深耕してしまっては、麦藁は下層に反転・鋤き込みされるので、地温が低く、腐食が遅れると言うのである。確かにこの理屈は正しい。表層の耕起でも麦藁は土壌に充分に混合され、腐植に必要な水分に満たされる。表層はあまり圧縮されることもなければ、空気も多く、かつ、地温も高くて好気性の発酵菌は盛んに活動するものである。
こうしておいて、有機物が充分に腐食したことを見届けた上で、秋にボトムプラウで深耕・反転・鋤き込みをする。このような基本的なステップによって、甜菜は健全な生育を示し、高位収量がもたらされると繰り返し説明する。
随分と手が込んでいるようであるが、考えてみるとそれ程のことではない。特に難しい技術ではなく、基本に忠実なだけの話である。この位のことは励行しなくてはならないと思えた。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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