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【江刺の稲】
農業と食産業界のロボットたちよ
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第74回 2002年04月01日
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農業と食産業界のロボットたちよ
先月号でも書いた農業および食品の流通業界の“嘘”の告発がさらに続いている。全農の関連企業の嘘が告発されているが、「さもありなん」と笑っても、「こともあろうに、云々…」などと書く“正義”のジャーナリズムになるつもりはない。むしろ、同時進行している政界や行政の不正や怠慢、あるいは欺瞞の告発に関しても、我々は、疑惑や権力を糾弾することだけではなく、それに連なる己自身を問うべきなのであり、雪印食品のあのサラリーマンとは自分自身なのではないのかという、“問い”を持つべきだと考える。
さらに、告発される企業人や政治家や官僚たちによる様々な“事件”も、彼等が演じる“犯罪”や“腐敗”というより、それが彼等の“想像力の欠如”や“感覚麻痺”に由来するものであることを、より深刻に受け止めるべきなのだと僕は思う。そして、彼らが糾弾を受けてもカエルの面にナントカを決め込めるのは、それが彼等の“悪意”からではなく、自らが背負っている“責務”を果たすべく行っているのだと認識しているからである。彼等がそれを通して利殖の手段や天下り先を確保し得たとしても、彼等の意識の中では責務を果たすための手段であり結果だと信じて疑わないのだろう。そして、我々もまた、彼等がもたらす恩恵に与ってきた者の一人だと自覚すべきなのである。
今、彼等を糾弾する記者たちも、かつて批判の対象となっている政治家や官僚、大企業や大組織の権力者が飲む美酒のおこぼれを頂戴して自ら倫理を狂わせることはなかったか。百も承知な事実をなぜ報道してこなかったのか。批判する彼等もまたそんな政治家と同じ村の住人なのである。権力者へのヘツライや省益のためのご都合主義を演じてきた官僚が、状況が変わると平気で“恫喝政治家”を“売る”ことだけに終わらせては駄目なのである。
我々は突破口の見えない焦燥感を解消するために“魔女狩り”をして自らの不満のガス抜きをすることではなく、我々の社会の行詰まりの根本原因を自らのありようを含めて問い直す必要があるのだ。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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