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【村井信仁・67歳からの新規就農日記】
野菜作のための播種、移植床造成
- 農学博士 村井信仁
- 第3回 2002年04月01日
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急がば回れ―作業は圃場を乾かしてから
軽しょう土であれば、普段から深耕に心掛けていると、午前に降雨があっても、余程の大雨でもない限り午後の作業にはあまり支障はないものである。ところが、粘質土壌の転換畑は、それ程単純ではない。四輪駆動のトラクタは駆動力があるからと無理に畑に入れると、仮に一通りの作業を消化したとしても、見えないところで不透水層が形成されてしまうので、注意しなければならない。
粘質土壌の場合、表層が乾いているようでも、下層はかなり高水分である。トラクタが走行すれば、下層はトラクタのタイヤで踏み固められる。水分が多ければ、前輪と後輪とで練り込みの状態になり、透水しないようになってしまうものである。
排水性を良好にしようとして、深耕していれば、なおのこと練り込みが大きく作用する結果となってしまう。粘質土壌の場合、あせってはならない。充分圃場が乾燥するのを待って作業するのが正しい。
そんなことでは適期作業を逸しかねないと考えるであろう。そのおそれがない訳ではないが、高能率作業体制を整えるなどして対応すべきであり、あせっては失う物が多い。
例えば、無理をしてトラクタを入れたとする。タイヤの走行跡は踏み込みで深く凹み、その場所が練り込まれているので、降雨があると滞水し、その水がなかなか引かない。前よりもトラクタが作業できない状態が続き、大事な管理の適期作業が全く出来ないことになってしまう。
始めよければ終わりよしと言われるように、最初が肝心である。急いては事をし損じるのであり、降水の後には無理してトラクタを入れないことである。排水を待って作業すれば、遅れたようであっても、万事良い方向に展開するものである。
一年目の農業では、軽しょう土での経験が頭にこびりついていることと、機械に対する過信があり、かなり無理をしてしまった。結局のところ、適期に除草作業などができずに、却って労働負担が増えてしまった。土壌の特性を冷静に判断し、的確な対応をすることである。
農家家業も二年生になると、いろんな事を学んで大部逞しくなるものである。しかし、まだまだその土地での経験不足を露呈する。
ばれいしょを移植栽培すると、7月の中旬には収穫できる。しめたとばかりにその後作に、キャベツや白菜などの秋野菜を作付けることにした。北海道でも二毛作は充分可能なのだと鼻高々である。
そこ迄はよいとして、この場合も軽しょう土の経験が災いする。十勝地方では、加工用のばれいしょを収穫した後に秋播き小麦を作付けすることが多い。秋播き小麦は9月20日までに播種を終えなければならないが、前作が加工用ばれいしょであると何とか間に合うのである。
ばれいしょの時に深耕しているのであるから、秋播き小麦を作付けするに当たっては、必ずしもボトムプラウで深耕しなくとも差し支えない。また、秋播き小麦はばれいしょの後作であれば、雑草の繁茂も少ないので、スタブルカルチベータやヘビースプリングハローによる簡易耕でも特に問題ないとされている。低コスト化のための一つの技術であるとさえ言われている程である。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
村井信仁・67歳からの新規就農日記
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