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特集

酸素に注目する湿害対策
“湿害”は畑で起これば田圃でも

湿害発生のメカニズムについて 

【はじめに】

 台風や集中豪雨で耕地が冠水した場合、露地野菜などではいわゆる湿害が発生することがあり、農業生産にとって大きな問題となる。そこで、湿害とは何かということを湿害の発生メカニズムや耐湿性の強弱の問題と関連させながら、主に野菜を中心に植物生理の側面から解説したい。


【根にとって必要な酸素】

 水は植物の生育にとってなくてはならないものであり、水不足は植物の生育に様々な悪影響を与える。しおれから始まり、光合成の低下などを伴って、最後には枯死に至る。それほど水は植物にとって必要不可欠なものであるにもかかわらず、畑に水が過剰に存在する状態になると今度は逆にいわゆる湿害が生じる。この場合もしおれなどの症状から始まり、根腐れや葉の黄化が進み、ひどい時には枯死に至る。

 では植物にとって水は多過ぎると良くないかというと、必ずしもそうではない。たとえば、現在、野菜栽培で広く行われている水耕栽培では、水が根のまわりにふんだんにあるにもかかわらず、湿害は生じない。それはなぜかというと、例として金魚や熱帯魚などの観賞魚を育てる時のことを思い浮かべるとわかりやすい。これらは多くの場合、鑑賞魚の飼育環境を良くするために、水槽にエアーポンプや濾過装置を設置して、エアレーション、すなわち酸素の供給を行っている。水耕の場合も、観賞魚に酸素を供給するのと同じように、培養液に酸素の供給を積極的に行い、培養液の溶存酸素量を増加させている。従って、根のまわりに水が多量にあるにもかかわらず湿害が生じないのである。


 例えば、多くの湛液型の水耕装置では空気混入機が設置されている。NFT(薄膜水耕)では、培養液を傾斜に沿って流しながら循環させることにより、空気中の酸素が培養液に溶け込むように工夫されている。逆に、培養液中の溶存酸素量が少ないと生育が抑制される。水耕栽培に関係して、培養液中の溶存酸素量と野菜の生育の関係についてはいくつか調べられている。表1は、根域の酸素濃度とトマトの生育との関係を調べたもので、根の伸長量、根の重量、地上部の重量とも酸素濃度が低いほど抑制されることがわかる。培養液の循環回数が多ければ溶存酸素量も増加し、生育も促進される。このように、植物の生育、特に根にとっては、酸素の供給が必要なのである。


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