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特集

酸素に注目する湿害対策
“湿害”は畑で起これば田圃でも

【湿害の発生メカニズムについて】

 通常、畑の土壌には空隙があり、大気中の酸素がその空隙を通って根に供給される。畑が湛水状態に陥ると、空隙は水に置き換わり、酸素の供給が十分に行われなくなる。従って湛水状態に陥ったために生じる湿害は、端的にいって水そのものが植物に害を及ぼしているのではなく、根への酸素供給量が不足するために引き起こされる害といえる。

 図1は、水はけの良い砂壌土のピーマン畑で土壌中の空気組成の変化を追跡した例である。通常は20%前後の値を示す土壌空気の酸素含量が、大雨の直後には3%までに激減していることがわかる。

 根の酸素不足で生じる障害の発生のメカニズムとしては、次のようなものが考えられる。

 酸素の少ない嫌気的条件下では好気的呼吸(通常の呼吸:酸素を使って糖などを分解し二酸化炭素と水を生成する)にかわって嫌気的呼吸(酸素を使わず糖などをアルコールに分解する)が行われ、植物に有毒なエタノールが生成される。被害がひどい場合は、根の細胞、組織が破壊され、いわゆる根腐れが引き起こされるわけである。根が植物にとって非常に重要であることは言うまでもないが、一度根腐れを起こしてしまうと、水分も養分も吸収することができず、場合によっては枯死に至る。

 土壌中に水が十分あるにもかかわらず、しおれが観察されることがある。一見逆説的な現象ではあるが、これも湿害による被害で、根の酸素不足により根の活性が低下し、根の吸水力が低下するため、根の吸水量が葉からの蒸散量に追いつかず、植物体内の含水量が低下するためにしおれると考えられる。タバコにおいては根が嫌気的状態になると数時間で根の吸水力が3分の1以下に減少するとの報告もある。

 湛水状態は、植物ホルモンの生成にも影響を及ぼし、ジベレリンやサイトカイニンの合成が抑制され、アブシジン酸の合成が促進される。また、湛水状態でエチレンが多量に発生することも知られている。このエチレンの生成により、葉柄の上偏生長(葉柄が下に垂れる)、葉の黄化、根の伸長阻害などが生じるといわれている。ただ、これら植物ホルモンが湿害の発生にどのように関与しているかなど不明な点も多い。


【耐湿性の強弱に関係する要因】

 もちろん野菜の中でも、湿害に強いものや弱いものがあることが知られている。そこで、次に植物の耐湿性の強弱をもたらす要因について考えてみたい。

 まず、根の酸素要求量の違いが考えられる。要するに、酸素要求量の少ない種類のものは、溶存酸素量が多少減少しても酸素不足状態にはならないか、またはなりにくいと考えられる。

 野菜について酸素要求量の違いを、1gの根が100ccの水中から1時間に吸収した酸素の量を各温度について測定することによって調べたものが表2である。例えば25℃における値を見ると、インゲン、イチゴ、キュウリで多く、ナスで少ない。

 もう一つの要因として、ハスや水稲に代表されるような水生の植物と呼ばれているものの例を考える必要がある。これらの植物は根が湛水状態になっていても、一般に湿害は生じない。それはこれら水生の植物では通気組織(aerenchyma)と呼ばれる空隙が茎や根の内部に発達しており、根の呼吸作用に必要な酸素を地上部から供給できるようなしくみとなっているからである。この地上部から根への酸素供給のしくみは水生植物に限らず、陸生の植物でも多かれ少なかれ存在すると考えられており、地上部から根へ酸素を供給できる能力の差が、耐湿性の強弱に関係する。

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