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特集

酸素に注目する湿害対策
“湿害”は畑で起これば田圃でも

 野菜について地上部からの酸素の供給量がどの程度あるかを調べたデータが表3である。茎葉を付けた場合と茎葉を切除した場合の、2時間に100ccの水中から吸収した酸素の量を測定したもので、多くの野菜で、茎葉を付けた場合に比べ茎葉を切除した場合の酸素吸収量が増加している。この増加は、茎葉からの酸素の供給がなくなったために生じたと考えられる。増加の程度が多いものとして、ミツバ、ササゲ、タマネギ、サトイモ、ゴボウなどがあげられ、これらは茎葉からの酸素供給の寄与度が高いと推察される。

 植物の代謝の面からも、耐湿性に関係する要因が検討されている。湛水により嫌気状態に陥るとエタノールが蓄積することはすでに述べた。この湛水時のエタノールの蓄積はアルコール脱水素酵素活性が高まることと関係が深いと考えられている。ところが、耐湿性の強い植物では湛水状態になってもアルコール脱水素酵素活性はさほど高まらず、有毒となるエタノールは蓄積せず、その代わりに毒性の弱いリンゴ酸、シキミ酸、グリセロールなどを蓄積することが知られている。すなわち、耐湿性の強い植物には有毒となるエタノールの代わりに毒性の弱い別の物質を生成するメカニズムが存在する(図2)。

 耐湿性に対する強弱は、季節によっても異なるし、作物の生育時期によっても異なる。例えば、北半球では冬に穀類を3日間湛水状態においても2日まではその影響がないが、5~6月に同様の処理をすると収量が20%減少する。また、冬期の場合は18日間湛水状態におくと約20%の減少となるが、5~6月に同様のことを行うと成熟前に枯死するとの報告もある。水温が高くなると水中の溶存酸素量は減少し(表4)、また、高温になるにつれ根の酸素要求量は増加する。こうしたことから、高温の時期ほど湿害を受けやすいことは容易に想像できる。

 また、湿害は根の先端部で起こりやすいといわれている。これは、根の先端部は細胞分裂が盛んに行われ活性の非常に高い部分であることから、常に酸素要求量の高い状態にあり、いち早く酸素不足に陥るためと推察される。

 深根の作物より浅根の作物の方が湿害を受けやすいともいわれている。土中の酸素量は地表から深いほど少なくなり(表5)、土中深く入り込んでいる根は、低酸素状態に適応していると考えられる。逆の見方をすれば、酸素要求量の高い根は酸素の少ない土中深く入り込むことができず、酸素量の多い地表面に分布せざるをえないことになる。そのように考えると地表面に分布している根は活性が高く酸素要求量が高いが、湿害を受けやすいと考えられる。

 湿害は、条件によって多少は異なるだろうが、1~2日程度の短時間の湛水状態では根腐れや枯死にまで至ることはほとんどなく、長時間の湛水状態、酸素欠乏状態が続くことで症状が現れるものと思われる。従って、土壌の排水を良好にし、酸素欠乏状態からできるだけ早く回避させることが湿害対策として重要である。土壌の排水改善等の対策技術については別の解説記事を参照していただきたい。

(農業技術研究機構 野菜茶業研究所 環境ストレス研究室長 今田 成雄)

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