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特集

酸素に注目する湿害対策
“湿害”は畑で起これば田圃でも

 実際、菱沼さんがサブソイラで心土破砕をしてから、稲は凛と伸びている。

田村 「菱沼さんの湿害対策の大きなポイントは、プラウの反転耕を取り入れながら、なおかつ、サブソイラで硬盤を破って水を抜いていることです。通常のロータリで作土を撹拌して細かくするだけでは、土が乾きにくいのです」

 けれども、それだけ時間とエネルギーを使えない人には、プラウとサブソイラの特徴を持ったプラソイラがある。

田村 「プラソイラは、爪の部分が硬盤の少し下へ入り、削り取るような起こし方をします。表層の硬盤を少し削ると、そこから水が染み込んでいきます」

【収穫量は3~5割増】

 菱沼さんがサブソイラで心土破砕する以前の湿害対策は、圃場に溝を掘ることだった。けれども、その唯一にして最大の湿害対策だった溝掘りも、さほどの効果が得られなかった。なにしろ、表面に溜まった水は溝に流れ込むが、作土と混ざり合った水は、蒸発を待つしかなかったからだ。

 たとえば、畑作を条件とする大豆は、水稲とは異なり乾いた土が必要である。だから、麦を収穫し終えた圃場に、大豆を蒔く際に雨が降ってしまうと、もう手立てがなかった。たっぷりと水分を含んだ作土には大豆が蒔けなくなり、農作業の手順を大幅に狂わせていた。これは栽培技術以前の、播種ができないという根源的な湿害問題だった。そのような条件にあっても、菱沼さんは収穫不可能な圃場に種を蒔いた。助成金の関係があったからだ。しかし、菱沼さんは心穏やかではいられなかった。

 そんな中でのサブソイラのフル活用が可能となったことは、起死回生の逆転劇だったといえる。

 圃場に160cmほどの間隔で深さ50~60cmのところに、不浸水層を破って直径12cmほどの簡易弾丸暗渠の穴を作ると、その弾丸暗渠の穴を通って地表の水が下へ抜けていった。これで、収穫のための播種ができるようになったのだ。

 それまで収穫できなかった圃場に作物が実り、水はけもよくなって作業がしやすい作土になった。また、掘った溝と、その土を積み上げた部分は、耕作が不可能だったが、それが可能となったのだ。これらの条件が整い、当然の帰結として作物の収量が増えた。その数字は、3~5割増という。言い換えれば、これまでこの数字が、湿害により減少していたのだ。

 サブソイラは、硬い土の層を破砕すると同時に「農業経営者」の前に長年立ちはだかった壁にも風穴を開けてくれた。

(取材:関 朝之)


■菱沼英昌さん(63歳)
(有)イワセアグリセンター
【プロフィール】(ひしぬま・ひでまさ)昭和14 年4月、茨城県岩瀬町生まれ。昭和49年、富谷地域営農集団を10名で結成。その後、減反政策により固定転作を受託するようになる。昭和60 年には、土地改良に伴い全域によるブロックローテーションに移行し、全面耕作を請負う。平 X13年3月、法人化された(有)イワセアグリセンターの代表取締役となる。現在も稲・麦・大豆・ソバなどの作付に忙しい日々を送る。
〒309-1347 茨城県岩瀬町富谷476
TEL 0296-75-1604


■田村政行さん
スガノ農機(株)
【プロフィール】(たむら・まさゆき)昭和26 年11月生まれ。北海道札幌生まれ。昭和51年スガノ農機(株)に入社。平成11年、茨城県などの管轄である美浦営業所に転勤となる。営業マンの範疇に留まらない地域の農業者たちのアドヴァイザーでもある。

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