ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

“安心”は「農水省ガイドライン表示」の外にある

西田 農薬業界も、農薬の効果については別として、総合的に農薬を評価する作業を全くしてこなかった。重金属を含有した昔ながらの古い農薬から、新しいものまで、農薬登録されているものは、基準に達しているんだから一緒やと。いってみれば、軽自動車もベンツも車はみんな一緒ですと言って宣伝しているようなものですよね。そうこうするうちに、生協や北海道は、こういう農薬はやめようというリストを作っているし、カルビーに限らず、流通加工業者も作る。そのなかで、農薬業界は取り残されている感じがします。

 本当なら、消費者なり農薬関係者なり農家なりが、一緒に話し合う共通のテーブルがあるといい。その共通のテーブルを作るのはだれかといったら、カルビーのような流通だというのが見えてきましたね。その意味で、こういう動きがどんどん拡大してほしいし、それが広がれば、本当にいいものはなにかを選んでいくことにつながっていくと思います。


誰のために作っているか考えないと生き残れない


西田 ところで、カルビーでは、技術的な指導はどうしているんですか。

松本 われわれは「指導」ではなく「支援」と呼んでいるんです。会社の中のスタッフにも話しているんだけれど、新しい技術は、たしかにまちがいない。でも、上から現場に「これをやれ」と言っても、現場では全然身に付かないんです。なぜかというと、現場が基点になっていないからですね。現場の要求を基点にして、それに応える技術じゃないと、意味がない。カネは、研究費も含めてお客さんが出すのであって、国が出すわけじゃない。国からお金をもらって好き勝手に研究して、その技術を上から現場に押しつけるような体制はやめようと。現場のひとつひとつの要求に応えて、よくしていくことが大事なんだよね。ひとりひとりの生産者は、どこがどう困っているのかをよく見ながら責任持つという体制を、現場を基点にして全部組み換え直さないといけないと思っています。

西田 農薬業界もそうなればいいんですけれどね。農薬業界のお客さんは、今のところ農家であったりJAであったりするわけですが、本来、だれのために使っているかを考えたら、究極的には、消費者だと思うんですよね。消費者が客だと思って技術開発やマーケティングをすれば変わると思うんですが。

松本 しかも、農家といっても、標準の農家を想定して、使用基準とか使用方法を書いて、それで終わってしまうんですよ。利用者を見て、それで考えなければいけないんですよね。一般的に、誰のために作っているんだというつながりのないものは、これからは落ちていくのではないかと思いますよ。カルビーも、畑では、農業生産者のマーケティングをして、困っていることにはコンサルティングやコーディネイトするという機能をもう一度再編成しないといけない。一方の工場では、生産者の名前を意識して、今日はこの生産者の馬鈴薯を使うからこういう体制にしようと。

 消費の現場と生産の現場のマーケティング体制をどうするかは、とてもよく似ているんです。消費の現場に関していえば、カルビーは90年代にマーケティングを変えました。全国すべての店をフィールドレディーが回って、その店に置いている商品の鮮度をチェックする体制にしたんです。そこから、いろいろなものが見えてきて、それを商品政策に生かしてきた。これを折り返すと畑でやるべきことが見えてくるんです。同じと思って見ていたら、実際に回ってみると、それぞれ畑によってちがう。だから、いろいろなコースの選び方を用意して、店頭でやってきたのと同じことを畑でもやろうと思っています。

関連記事

powered by weblio