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特集

“安心”は「農水省ガイドライン表示」の外にある

全国共通の生産記帳システムを作る

昆 しかも、「生産者」「消費者」と言っていること自体がおかしいんじゃないか。われわれはみんな、お天道様の消費者であって、農家が生産者なんていうのはおかしい。農業はずっと“作物生産業”としか見られてこなかったけれど、現在の先進国では、農業を物質循環業としてとらえなければいけないんじゃないか。これだけ窒素が日本にたまっているわけですし、その問題を解決するほうが、安く食べ物を作るより本当は深刻ですよね。

原 僕は、まず過去を分析して、10年先に人間の心はどう変化していくか、農業や食料だけでなく社会がどう変化していくか、アジア、世界がどう変化していくか仮説をたてて、そのなかで自分たちが今いる位置を見ながら、今後どうしていったらいいか考えるんです。

 たとえば、全農の事業でいえば、肥料・農薬関係は稼ぎ手です。しかし、僕から見れば、日本で窒素がこんなにたまってしまっているのに、なおかつヨルダンからいっぱい持って来るなんて、ふつうの感覚で考えれば狂っている。今すぐやめろというのではなく、10年後をきちんと見て、どう変化していけばいいのかを考えるべきだと思うんです。

昆 それと、農業では本質的な意味での“商売”という概念が全く問われてきませんでしたよね。まともな商売人ならお客さんに対して買い続けてもらう努力をする。本当は農業の世界でも、自然にそういう感覚があってよかったはずなのに、農家やその周辺が利権化してしまって、健全な商売人になるチャンスを失ってしまった。これは農協にも政治にも責任があると思います。

 その意味で、全農や各農協が本当の意味で民間になること、そのなかで個別農家が“農民”でなく経営者になること。“安全”を安易に差別化の手段にするのではなく、情報公開の手段としてシステムを作って、買い手にもっと農業のことをわかってもらう。もっと一緒に組みましょうという方向に進むのが理想ですよね。安心システムというのは、結局、そういう方向を見ているわけですね。

原 そうですね。ただ、全農安心システムと名前がついているけれど、中身を作っていく段階で、これは国のインフラとしてやらなければいけないと確信しました。だから、だれでも利用可能な生産記帳システムをオープンなインターネットで作ったんです。今は、生協も量販店も自分たちのフォーマットを別個に持っているので、取引先の多い生産者は大変ですよね。だから僕たちは、全国共通のフォーマットを作ろうと思った。たとえば量販店が欲しい情報は、共通データベースからCD‐ROMに落として全部あげる。生協の欲しい情報は別の変換ソフトを作ってあげる。そのかわり、ソフトを作るお金を負担しなさいよということを考えています。

昆 こういうシステムができると、現実に全農の農産物販売のなかで、かなり変革が出てくるんですか。
原 すでに出ているところもあります。今回のさまざまな事件の業務改善命令で、行き着くところは、このシステムで事業を再構築するって回答しかないわけですよ。システムの本質は理解していなくても、参加したいという点ではスピードが速まっています。その意味では、危機感がだいぶあると思います。

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