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特集

農薬は誰のために?

 山形県において無登録農薬を販売した業者が逮捕されたことを皮切りとして、“無登録農薬”の問題が全国に波及している。 現在までに山形及び東京の2業者が逮捕されているが、これら業者はダイホルタン、プリクトランという過去に登録失効した農薬を販売。それが全国30の都県で使用されていることが確認されている。 これら農薬を使用した農家の中には、無登録であることを知っていながら使用した人たちもいることから、政府は、今まで無登録農薬の販売業者のみに罰則を科していた現行法を、使用者への罰則のあるものへと変更する方針を固めている。 これは「有機・無農薬運動」や「トレーサビリティ」といった「食の安心」という話題が追求されていく中で当然の帰結として起こったことと言える。逆に言えば、農業の現場を知る者であれば、誰もが予想していたはずのことであり、“事件”というにはあまりにも自明のことであったはずだ。今マスコミでは、販売業者と使用した農家に対する批判が喧しい。しかし、当誌が何度も指摘しているように、マイナークロップの問題をはじめとして、現行の農薬登録や流通販売制度にも大きな問題があるのではないか。農産物消費の最前線におり、消費者への説明責任を有するはずの外食・量販店も、ただ「情報開示」と農家に要求し、問題が起こる度に商品棚から農産物を撤去するだけでは、その責務を全うしているとは言い難いのではないか。 “農薬は、農産物を食べる人のためにある”これが本誌の結論である。農薬メーカーから農家、フードビジネス業界まで“食”に関わる人々すべてがこの考え方を共有していなければ、消費者に対して最終商品としての農産物の安心を伝えることはできない。
座談会「農薬は農産物を食べる人たちのために」(【出席者】橋野洋二(シンジェンタジャパン株式会社 マーケティング部 野菜クロップマネージャー)/築根照英(日産化学工業株式会社 農業化学品事業部 営業企画担当部長)/伊東 清(株式会社モスフードサービス 商品本部 アグリ事業グループ エキスパートリーダー))



起こるべくして起こった農薬問題


昆 今回の無登録農薬問題をはじめ、今、メディア上では非常に情緒的な形で農薬について語られています。まず、この無登録農薬の問題の本質がどこにあるのかを考えていかないと、ただ農薬不信を煽るだけの結果となり、本来あるべき姿を失いかねない状況にあるのではないかと思います。「農業は食べる人たちのためにある」と考える時、農薬も「生産者の生産活動のためにある」というよりも「食べる人のためにある」ということがはっきりと認識されなければいけないのではないでしょうか。
 外食・量販など農産物の買い手側からは、生産者がどういう農薬を使っているのかを知りたいという要求が高まっています。確かに情報公開は大切なことですし、無登録農薬が販売・使用されていること自体大きな問題です。しかし、マイナークロップなどを含めた農薬登録の問題や農薬の流通販売の問題など、それらを根本的に解決していくためにクリアしなければならないことがらがまだ多く存在しているのが現状ではないでしょうか。そのためには、農薬メーカーが生産者や農産物の買い手たちと情報の協力関係を作っていくことが必要ではないかと思っています。

 その意味で、今日おいでくださった皆様には、現状で起きていることがらについてどういった問題意識を持っていらっしゃるか、そして、どういう対策を考えておられるかなどを話していただければと思います。まず、皆さんはBSE問題から始まった一連の事件についてどのような認識を持たれているでしょうか。

橋野 私は、一連の食に関する問題は、起こるべくして起こったという感想を抱いています。“食に関する安全性”をキーワードに、BSE問題から偽装表示問題へと移行し、最終的に農家が作る農産物の安全性についても言及されるようになったのだと感じています。おそらく、BSE問題が起こった時も「自分たちは被害者だ」と感じていた農家は多かったのではないでしょうか。今回の無登録農薬の問題の意味は、農家にも“被害者”ではない、“当事者”としての倫理観が求められているということにあるのではないかと考えています。ほんの一握りの人たちでしょうが、農家の一部には安全性に対する意識が低い人たちがいる、それが今回の問題の一因であったと言えるでしょう。当然、それに加担する農薬流通業界も含めた全般的な倫理観の不足が、昨今のような形でメディアに捉えられたのではないかと感じています。
 今回の一連の問題では、無登録農薬、あるいは登録失効農薬の販売という違法行為によって、逮捕者を出す事態にまでなりました。農協や農家を含めた生産者は、BSE問題など過去1年の経験を踏まえて、これがさらに大きな問題へと発展するのではないかという危惧を短い時間で抱かれたようです。おそらくBSE問題や偽装表示問題がなければ、輸入農産物の残留農薬問題や無登録農薬・登録失効農薬などの問題には、それほど注意は払われなかったのではないかと思うのです。いまは生産現場が非常に混乱していて、細かな適正使用基準に関するところまで問題が拡がるのではないかと、感性が高ぶってしまっているのが現状です。

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