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特集

農薬は誰のために?


 今問題となっているのは“無登録農薬”についてですが、“無登録”といっても何を指すのか分かりずらい部分があるかと思います。まず、登録農薬とは何かということについて分かりやすくご説明いただけますでしょうか。

橋野 登録農薬とは、いわゆる農林水産省が管轄する登録番号を持っているものを指します。ただ、農薬登録にも種類があります。たとえば、食用に付さないものと非農耕地に使用するものがあります。これらの「農耕地であっても食用に付さないもの」や「非農耕地に使用するもの」では、登録も比較的簡単でコストもかなり低く抑えられます。一方、食用作物に使用する農薬は登録が非常に厳しく、慢性毒性のデータを揃えることで消費者の安全性を担保していく作業が必要となります。今、農薬取締法の網をくぐって入ってきているものの一つは、「非農耕地に使用する」形で登録されていながら、食品市場に入ってくるという抜け道を通っているものです。もう一つは個人輸入代行で輸入された農薬です。いわゆる個人の使用に限りその使用者が輸入してもかまわないという法律があり、それを盾にして日本で登録をとられていない農薬がかなり横行している現実があります。ある意味、これも無登録農薬と言って良いと思います。無登録農薬だけれども、合法的に日本で流通しているのです。
築根 今、問題になっている登録失効農薬というものには、安全性が問題で失効したものと、メーカーとして経済性がないので登録の更新をやめたという二つのケースがあります。共通しているのは登録番号が法律上意味をなさなくなったということです。農薬検査所のホームページで、現在日本で登録が認可されている農薬はすべて見ることができるようになっています。そこに登録番号が載っていないものは、すべて無登録農薬ということです。
橋野 ただ、先ほど昆さんが指摘されていたように、“無登録”という言葉がマスコミなどによって大きく取り上げられることで、マイナー作物への適用外使用が完全に封じられたとしたら、それらを生産する農家としては対応できなくなってしまうでしょう。
昆 私は「農家が生産できなくなる」という捉え方ではなくて「消費者が食べれなくなる」あるいは「外食産業が調達できなくなる」と考える必要があるのではないかと思います。買い手業界は、それをあなた任せにし過ぎたのではないでしょうか。
築根 栽培面積が少ない作物では、登録農薬が10~20、あるいはそれ以下といったものもあります。たとえば、1作物1害虫に適用拡大をする場合、効果試験が6例、薬害試験が2例、作物残留試験が2例必要となります。これだけで約600~1000万円はかかるのです。メーカーの立場としては、たくさん農薬が使用されるキュウリやキャベツに用いる農薬には適用拡大しやすいのですが、使用の少ないマイナーな作物には、コストはかけられないというのが実状です。マイナーな作物については、国の特殊調査事業といった補助事業で適用拡大が進められてはいるのですが、まだまだ登録農薬が少ないのが現状です。その制度をさらに活性化していただければというのが、メーカーとしての立場でもあるのです。メーカーサイドとしては、マイナー作物に登録農薬が少ないのは、その登録取得のためのコストに問題があるからなのです。

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