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特集

農薬は誰のために?

各地の取り組み状況と群馬県の条例制定

 問題解決に向けて農家がバイヤーやJAや生協などに無登録農薬を使っていないことを誓約する動きが各地で出てきています。この誓約書提出の流れで流通サイドからの信頼関係はとりあえずは維持されたと思われます。ただ、このことは問題が起こった際には農家が責任を負うことを明示したことになり、責任のありかを農家に押しつけるやり方とも取られています。一部の農家はこのようなやり方に反発心を持っているようですがやむを得ないことでしょう。正しく防除をやれば良いだけのことですからあまり深く考えなくて良いと思います。

 産地単位、あるいは県単位で安全宣言と言えるものを出すところも増えてきました。青森県ではリンゴに関して安全宣言集会を開いて市場の回復を狙う予定になっています。産地復権に向けたきっかけになりますし、農家の士気も向上することでしょう。しかし、万が一宣言後に無登録農薬使用が新たに出てきた場合には全くの逆効果になり、産地イメージは地に落ちてしまいます。そのリスクを見越した上での宣言ですから関係者は慎重に調査を進めたはずです。安全宣言をするというのはそれだけ大変なことだと言うことです。

 山形県では情報公開の積極的な推進が目立ちます。賛否両論のあった使用農家の氏名公表については、東根市において使用しなかった農家の氏名公表で落ち着いたようです。使用農家をさらし上げるような結果にならなかったことは好ましいと思います。また、県内収穫物の残留農薬検査を進め、プレスやホームページへ結果発表を積極的に行っているのは信頼感を増すために重要な取り組みだと言えます。農薬取締法の改正案を議会でまとめて意見書を提出するなどの対応も良かったと思います。

 群馬県では条例制定という形で県産物の安全性をアピールしようとしています。『群馬県における農薬の適正な販売、使用及び管理に関する条例』というもので10月11日に公布されました。その全文がホームページに公表されているので中身についてはそちらを見ていただけばわかります。内容的には現行の農薬取締法の遵守をうたったものであり、目新しさは感じられませんでしたが、県としての取り組みを内外に示したものとして注目されます。あとはこの条例がどのように運用されるかにかかっているでしょう。特に群馬県指定農薬というものに何が入るのか興味があります。行政が登録農薬を農家を対象として選別しようとするのは初めての試みではないでしょうか。


農薬取締法の改正

 さて、無登録農薬がどのように規制されるのか。また適用外使用や登録失効農薬の取り扱いなどがどのようになるのか。今後を考える上で重大な意味を持つのが農薬取締法の改正です。農水省は10月18日に始まる臨時国会に改正案を提出し、年内に可決・施行する予定で作業しています。中身についてはまだまだ流動的ですが、従来、販売者だけにあった罰則規定を製造、または輸入した者、及び使用者(つまり農家)にまで広げることは確実です。販売者に対する罰則も大幅に引き上げられます。それと、メーカーの都合で登録失効した農薬については、川下の農薬流通では困ることになりますから何らかの方策が考えられる見込みです。農薬登録は3年に1回更新しなければなりませんから、その際の手続きを簡素化する、あるいは失効後も有効期限内であれば流通を認めるといった方策が打たれる可能性があります。また、法改正に合わせて、海外からの輸入農薬を水際でくい止める方策についても話し合われています。具体的には農薬という名目でなくても農薬として使用されるであろう物質については輸入を制限するような方向になると思われます。

 今回の一連の事件を受けて規制や罰則が強化されるのは当然の成り行きであり、この改正自体は避けて通れないものであると理解すべきでしょう。また、BSE問題を発端とし、4月に発表された農水省の「食と農の再生プラン」では食料生産を生産者の視点から消費者の視点で見る方針変更をうたっていますから、農薬についても同じスタンスで行くことになるでしょう。

 しかしながら、実際の農業場面と照らし合わせて考えた場合、この改正は重大な意味を持ちます。それは使用者に対して罰則が設けられるということに関して様々な不都合が考えられるという点です。

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