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農業経営者ルポ「この人この経営」

酪農経営の可能性を独力で拡げた農業界の“落第生”

「カワヨグリーン牧場」と聞いて、経営主・川口彰五郎さんを一般的な酪農経営者と想像してはいけない。なにしろ、50haの広大な敷地に、牛は現在、約20頭しかいない。その代わり、羊が30頭も放牧されている。さらに、馬(道産子)3頭の放牧場もある。なによりも多いのが、この牧場を訪れる人間の数だ。来訪者は年間5~6万人。このうち、宿泊客が2000人を越える。 1957(昭和32)年に原野を開拓して作られた牧場は、現在、「牧場部」「宿泊部」「レストラン部」の3分野による複合経営で成り立っている。敷地内には、まず、乳牛、羊、馬の各放牧場がある。馬は乗馬体験、羊は毛刈り体験などで活躍する。
3つの事業で経営バランスをとる


 牧場経営のなかで、現在、事業収入の主軸になっているのは「レストラン部」だ。ピーク時には年間約1億円、現在も約8000万円の売り上げがある。このレストランは会社組織「カワヨ開発(株)」になっており、9名を雇用している。

 ここでは、牧場内で栽培された野菜や牛乳が食材として利用される。F1牛を使ったカワヨ牛ステーキコースは、ランチ・ディナータイムともに5000円。牧場の牛を使ったハムやコンビーフなどの加工品販売も行っている。

 2番目の収入源が「宿泊部」で、年間約2000万円。八戸市から約15km離れた下田町は、決して立地条件に恵まれているほうではないが、全国から年間2000人前後の宿泊客を集めている。

 宿泊者からは、敷地内にある手作りの温泉露天風呂が人気を集めている。また、牧場はJR東北線を見下ろす丘の上にあり、夜になると暗闇のなかをまっすぐに横切る電車の明かりが露天風呂からもレストランからも見える。まるで「銀河鉄道」を彷彿とさせるロマンティックなその光景は、旅行ガイドなどにも取り上げられているほど有名だ。

「牧場部」の収入は約1500万円。JAを通じての原乳出荷の他、レストラン部への食材販売、アイスクリーム・ソフトクリームの製造販売などが収入の主な内訳だが、牧場部門だけで見れば経営収支はマイナス。レストラン・宿泊事業の収益で牧場部門のマイナスをカバーしている。川口さんは言う。

「トータルでバランスをとらないといけません。自由化の波を考えたら酪農だけでは経営は難しい。でも、ここは、レストランも宿泊も、酪農あっての全てだと私は思っているんです。酪農はこの牧場の“環境”を作る仕事になっている。だから、どんなに苦しくても酪農は続けていきたいんです」

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