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【村井信仁・67歳からの新規就農日記】
プラソイラから考えること
- 農学博士 村井信仁
- 第11回 2002年12月01日
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プラソイラの効用
プラソイラは面白い機械である。サブソイラよりもけん引抵抗が少なく、それでいて排水効果は高い。7cmの幅のボトムが縦に土壌を切断し、これを表層に滑らせるだけの単純な構造であるが、考えてみると無理がなく、実に合理的である。
サブソイラは下層から土壌を押し上げ、力で土壌を破砕しようとするものであり、力勝負の機械である。これに対し、プラソイラはボトムプラウ的な構造で7cmの幅に土を滑らせ、作溝するだけのものである。必然的にけん引抵抗は少ない。
7cmの幅の作溝がなぜ排水効果に優れているのかと言えば、前にも述べた通り井戸を掘るのと同じ理屈である。溝は大きな空隙になっているのでそこに疎水性が発現する。また、溝の上層は土圧によって両側から埋め立てられるような形態になるが、この現象は土圧による砕土であり、それが疎水性をさらに高める結果となる。しかも、最下部は三角状の空隙となって長く形状を止め、さらに下層への水の浸透を誘導する。
圃場の排水性を良好にしようとすれば、サブソイラによる心土破砕が常識であったが、プラソイラはすっかりこの概念を覆してしまった。そればかりではない。実は60cmの間隔で60cmの深さに施工すると、約6%の心土が表層に浮上するのである。
化学性の劣悪な心土を作土に混入させることは好ましくないと考えられよう。しかし時代は異なる。長年の多肥栽培で以前と違って心土はかなり肥沃になっている。また、仮に劣悪な土壌であっても、今は土壌改良資材も入手しやすくなっており、その手当ては容易である。心土の混入はあまり神経質に考えなくてよいであろう。
心土が6%浮上することは、その分作土が下層に移動することを意味する。と言うことは、プラソイラの施工は時間を掛けた厚層作土造成技術と言えないこともない。つまり、一種の時間差的超深耕混層耕なのである。
これまでの土づくりの流れを振り返ると、トラクタの導入によって畜力時代の3倍の深さに耕起できるようになり、バレイショや甜菜はこれまでの3倍の収量になった。これは、深耕が根圏域(養分吸収領域)を拡大すると同時に排水性を良好にし、湿害を回避すると共に下層に根を伸長させ、旱魃にも耐え得る土壌にした結果である。
現在、一般的なボトムプラウによる耕起深は25cmから30cmであるが、35cmの篤農家もおり、2段耕プラウなどで50cm耕起することも珍しくはない。土の能力を最大限活用しようとしている表れであり、事実その試みから実績を上げている。
こう考えると、プラソイラは排水性改善ばかりでなく、土づくりに実に有用な機械と考えてよい。体験から言うと粘質土壌の圃場の改善には特に効果的である。焦らず時間を掛けての土層・土壌改良であり、無理のないところが評価できる。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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