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農業経営者ルポ「この人この経営」

企画とアイデア次第で農業は楽しくなる

5haの田んぼからできる米を全量産直で売り切る力の持ち主。と言って商売っ気をプンプン匂わせるでもない。根っから農業を楽しみ、土づくりを大切にし、「消費者との交流を増やしたい」と目を輝かせて語る35歳。明るく前向きで、話を聞いている側も明るくさせてくれる。小笹さんはそんな人だ。
就農3年目のピンチ


 小笹さんが就農したのは、バブル景気さなかの1987年。勤め先はいくらでもあったなかで、自らの意思で農業を選んだ。

「親も農業をやっていて、基盤があったということが大きいけど、周りが『逃げ道』にしている農業に、自分は最初からぶつかってみたかった」と小笹さんは話す。

 会社勤めをするといって町を出て行ったと思ったら、数年経つと戻って農業をしている若者を周りでたくさん見てきた。「会社勤めがうまくいかなくても農業をやればいいという生き方を自分はしたくなかった。僕にはこれしかないという思いで農業を始めた」

 小笹さんが就農するまで、家は野菜作中心の経営だった。だが、「学校に行っていた時からこれからは複合経営の時代になると思っていたし、自分なりの品目を栽培したいという思いもあった」(小笹さん)。結局、それまでの野菜に米、地元で栽培が増えつつあったハウスメロンを新たに加えて就農した。

 そんな小笹さんに早くもピンチが訪れた。小笹さんのメロンを買ってくれた客からのクレームだ。相手は電話の向こうでカンカンに怒鳴っている。「こんなまずいメロンを…」。

すぐに自分で食べてみた。おいしくなかった。すぐにお客さんのところに飛んでいって、土下座して謝った。
「堆肥も入れて自分なりに一生懸命に作ったつもりだった。でもしょせん『つもり』にすぎなかったんです。お客さんのことを甘く見ていた。タカをくくっていたんです」

 自分が好きで始めたメロンでお客さんを怒らせてしまった。小笹さんは、すぐさま専門家や地域のメロン部会の会員のもとに通ってアドバイスを請うた。

「あの時が本当の意味でのスタート。いまから考えればあの経験をしてよかったと思う。あのお客さんに怒られなかったらいまの自分はないかもしれない。おいしいという一言より、苦言をいってくれるお客さんが本当の客なんだと思うようになった」

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