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農業経営者ルポ「この人この経営」

生産者自らが海外の産地と肩を組む時代


 5年目のいま、法人の売り上げはすでに10億円に達する。うち5割は単価があらかじめ決まった契約栽培だ。一般の市場価格より1割は高いという。

 しかし、小久保さんはすでにその先の時代をみつめ、行動に移している。それが海外まで視野に入れた産地間のネットワークだ。


年をとったら退かないとだめ

 他の農産物と同じように、葬儀用の花の市場も急速に二極化が進んでいるという。高品質で高値を維持していくか、回転率を重視して薄利多売でいくかだ。小久保さんは2対8の比率だと見ている。この高品質なマーケットを、組織体としてカバーしていける花づくりをめざしている。

 13人で始めた「お花屋さん」もいまでは28人に増えた。そのなかには小久保さんの後継者である息子の恭洋さん(24)、他のメンバーの後継者、さらには小久保さんの農場で技術を学んだ研修生も各地にいる。「販売することを前提にした経営を身につけてもらいたいが、これからは若い人たち自身の感性で行動していってもらいたい。2代、3代と続く経営体にしていくためには必要なことだと思う」

 すでに小久保さんはそれを行動に移している。海外で4年間研修を受け、昨年帰国した恭洋さんに農場をまかせ、自分は大分県で新たな農場をつくる計画を立てている。「年をとったら退かないとダメ。自分がいると息子が伸びないからね(笑)」

 行政との話しあいが順調にすすめば、今年7月にも動き出すという。現地での雇用も考えており、新たな菊の産地にできればと考えている。

 一方、小久保さんは月に1度のペースで中国を訪れている。農家への指導のためだ。葬儀ではコンスタントな需要がある菊だが、特需というものが年4回ある。盆と正月、春と秋の彼岸だ。通常の生産量をその特需にあわせることはできないが、取引先からの注文には何としても応じなければという気持ちもある。そこで、中国に提携できる産地を作ろうとしているのだ。

 細かい栽培技術、ハウスの管理方法などなかなか伝わらない部分がある。なにしろ菊をつぼみの状態で収穫・出荷するのは日本しかないことで、それ自体を外国の農家に理解してもらうのは容易ではないという。「ここができていないと教えても『大丈夫。問題ない』と彼らは答える。なかなか手ごわいですよ」と苦笑いする。


生産者だからこそ築ける海外産地との提携

 ところで、小久保さんらは単に中国に生産拠点を作ろうとしているのか?否である。もちろん、一時的な特需の時に輸入するというのも目的の一つだが、いまや卸市場が海外から花を輸入する時代だ。農業経営者自らが輸入を手がけて何ら不思議ではない。

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