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特集

顧客のニーズから逆算した“品種”選び


 関東昔がえりの会は、首都圏の大手スーパーなどと契約し、無化学肥料栽培での農産物を出荷している。小暮さんのフリーダムも出荷され、店舗内の特設コーナーに並ぶ。結果的に、現在はスーパーへの出荷量が惣菜メーカー向けを上回るまでになった。

「消費者の方からは、香りがよくて甘みもあると好評です。イボがないことについても抵抗はなく、むしろ扱いやすいと感じてもらっているようですね」(小暮さん)

【開発からマーケティングまで三者が関わる】

 フリーダムをめぐっては、種苗会社と加工業界、生産農家が相互にコミュニケーションをとりながら、それぞれの立場で需要を掘り起こそうとしている。発売開始後の話だが、サカタのタネにはある漬物メーカーから「表面がつるつるしているから、浅漬けにムラがなく、漬かり具合がいい」という声も寄せられた。

「こうした加工メーカーの意見やスーパーでの店頭試食の結果を集めて、農家に栽培をお願いしに行く。もう種屋は産地に種を売れば終わりという時代じゃなくなったんですよ」(サカタのタネ・向井さん)
 確かに、これまで種苗会社は密かに新品種を開発し、完成してから一気に公表していた。このやり方だと、世間に受け入れられるかどうかは発売してみるまで分からない。しかも予想が当たる確率は低く、事前にもっと各方面からの要望を聞き、目標を絞って育種する態勢へと移行しつつある。

「これからの品種は、かなり末端までマーケティングをしてからではないと発売されないと思います。売った後は加工メーカーや農家の意見をくみあげて、育種にフィードバックさせていく。フリーダムはその最初の例になるでしょう」(同)
 一方、新品種を商品化できるかどうかを一刻も早く確かめたいのが加工業界だ。「市場だと、評価が下されるまでに最低3~5年はかかる。それでは反応が遅すぎるし、我々からみれば魅力があるのに埋もれていく品種は山ほどある」(ロック・フィールド・田中さん)

 種苗会社に加え、加工メーカー、生産農家の三者が育種開発に関われば、魅力的な品種を育て、世に問うまでの年月が大幅に短縮できる。「今後はトマトの育種などについても、我々の発想で要望や情報を提供していきます。種苗会社は各地に支店をもっているから、農家への栽培指導の点でもきめの細かいフォローも期待できる」(同)


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