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特集

顧客のニーズから逆算した“品種”選び


 従来、農家やJAに新品種を持っていくと、うまくいっても試作期間が2年。産地化に最低3年はかかる。しかも、たとえばアンデスメロンのように、すでに強い品種が定着している場合、新品種の入り込む余地がない。つまり、産地とともに新品種を育てる手法はなかなかとりにくい。しかし、買い手の保証があれば農家も話に乗りやすい。量販・農家と一緒に有望品種を育てていくことができる。

「つまり従来の手法でも黙っていても伸びる商材と、マーケットから掘り起こさないと産地に入らない商材があるんです」(前出・阿部さん)
 一方のヨーカ堂側も以前から種苗会社との連携を考えていた。同社では、購買客が青果にどんな不満を持ち、どんな要素を求めているかを品目ごとに調査している。求められる切り口は、糖度、鮮度、安全性、適量・簡便性など品目によってさまざまで、近年は高カロチンなど機能性が切り口になることもある。

「ただ、それをどこの立地・土壌で、誰に作ってもらえばいいかがわからない。従来は基本的に市場が窓口で、仲卸さんに『この糖度のメロンを探してよ』というのが昔の商品開発。これではPB(プライベートブランド)化できない。種屋さんに入ってもらえば解決するのではないかと、タキイさんに最初にお邪魔したのは15年前だと思います」

と同社青果部チーフバイヤーの立石和幸さんは振り返る。

 ヨーカ堂に限らず、量販・外食業界では、他社との競合が激化するなか、差別化できるPB商品開発が戦略のひとつになっている。タキイ種苗でも、ヨーカ堂以外のスーパー、外食産業、食品加工メーカーとの間で、現在約10品目が共同開発進行中だ。


【“種なし”の商品価値はどこにあるか】

 種なしスイカは1950年頃に開発され、70年代にはそれなりの流通量もあった。それが、80年代になって姿を消した。糖度が低かったせいもあるが、最大の理由は「種苗メーカーの商品としての価値がなかった」(タキイ種苗開発部技師・松崎保徳さん)ことだ。当時は、成苗率が極端に低かったのだ。

 しかし、海外では種なし果実のニーズが確実に高まっている。世界的に見れば、日本は種なし青果開発で遅れをとっているほうだ。将来性と海外市場を睨んだタキイ種苗では、発芽率が高く糖度もある種なしスイカの育種研究を続けてきた。3年前、ヨーカ堂から話があった時には、発芽率が約8割ある今の「たべやすいか」がすでに誕生していた。

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