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特集

顧客のニーズから逆算した“品種”選び


「今はスイカの6割がカット販売で、ダイスカットのパック商品も増えている。種なしスイカは今の流通販売形態にマッチしているんですよね。糖度や発芽率の向上がある程度まで進んだ育種のタイミングがそれに合致した形です」(松崎さん)
 一方、ヨーカ堂の立石さんは、簡便性の高い商品として種なし果実に注目していた。

「今のお客様は種を出すのを面倒と思われ、ブドウならデラウェアがけっこう売れます。そこで10年ほど前に、山梨県で種なしの巨峰を作ってもらって販売したところ、けっこう受けたんです。種なしを意識したのはそこからです」
 タキイ種苗との話し合いでは、ビワ、マンゴー、ザクロ、桃、そしてスイカの5品目の種なし化を持ちかけた。

「最初の4種類は半分冗談、半分本気でした。ビワは、他のメーカーさんから市場経由で2回ほど種なしが来ましたが、サイズも小さくて食味もよくなかったのです。ザクロも種なしができたと聞いてアプローチしましたが、具体化しませんでした。ところがスイカは、タキイさんから『具体的な品質基準を教えてほしい』と言われたんです」(ヨーカ堂・立石さん)
 そのときの立石さんの要求は、種なしであっても糖度が13度以上でシャリ感がなければ問題外、という条件。立石さん自身、かなり無理な注文と思いつつ「思い切って言ってみた」そうだが、翌年にはタキイ種苗から「スイカができたから滋賀の試験農場に来て欲しい」と連絡が入った。「食べてみたら、今までヨーカ堂で売っていたスイカはなんだったのかと思うくらいおいしかったのです」(立石さん)

 すぐに商品化に向けての話し合いが始まった。1年目の2001年は、一般圃場での試験栽培。タキイ種苗とつき合いのある滋賀・愛知両県の農家2名に、同社が技術指導をしながら10aずつ栽培してもらったところ、試験農場とほぼ同じスイカができた。生産された約1000玉をヨーカ堂が都内4店舗でテスト販売し、店頭アンケートを取った結果、評判も上々で、さっそくその秋から2年目の本格販売に向け、リレー産地形成に着手した。


【重要なのは対等なパートナーシップ】

 両社とつき合いのある産地ルートを使って各地のJA・生産者グループに声をかけ、説明会を開いた。タキイが栽培指導も受け持ち、商品はプレミア価格でヨーカ堂が買い取る。糖度など品質基準をクリアできなかったものも、レギュラー価格だが買い取り保証する。説明を聞いた結果、熊本・鳥取・愛知・福井・長野・神奈川・千葉・山形・青森と9県11カ所のJAや生産者グループが栽培に乗り出すことになった。面積にして全国7ha程度だった。

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