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日本農業が海外と比べて規模が小さいからといって怯えることはない。コストを下げる努力や一定規模の経営サイズを考えることは当然であるが、そもそも現代の日本の市場(お客さん)は、“価格”ではなく“満足”の市場なのだ。だからこそ“身土不二”や“地産地消”などという“宣伝コピー”が使えるのだろう。
食糧庁が平成14年2~3月に実施した「第2回食糧モニター定期調査結果」を見ても、米の購入先としては「スーパーマーケット(26%)」からという回答が一番多いものの、「農家から直接購入(24%)」と「親兄弟からもらっている(19%)」の二つを足すと、実に全体の43%に達していることをどう考えるか。しかも、回答者が農家から直接購入する理由(複数回答)は「信頼でき安心だから(72%)」が最も多く、次いで「おいしいから(62%)」であり、「価格が安いから(48%)」という理由は三番目なのである。
お客さんたちは、農業界から恩着せがましい説教をされるまでもなく、日本でできた、日本人の作ったお米や農産物を食べたいと思ってくれているのだ。しかも、それは日本国内だけではない。やがて、食糧が不足するといわれる中国でさえ、日本よりも多くの人々が日本産あるいは日本ブランドの高価格米を欲しがる時代が来るだろう。
そもそも、農産物の地場消費が衰退したのは、市場関係者を含めて農業にかかわる者たちがあたりまえの“商売”をしてこなかったからではないか。目の前にある市場を無視し続けてきた結果、弱体化してしまったのだ。それどころか、いつまでも“士農工商”の論理にしがみ付き、被害者意識をたぎらせ、農政が悪い、流通業者や商社が悪い、消費者が勝手だ、とお決まりのフレーズを繰返したからだ。
農業の世界もそろそろ敗北主義の“運動”や“政治”を卒業して、あたりまえの“商売”の世界にしようではないか。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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