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特集

安全か安心か、農薬取締法の経営的とらえ方

 農薬取締法改正を受けて、本誌読者を中心にアンケートを取ったところ、様々な質問や意見が寄せられた。 それら質問や意見の多くは、農業の現場にいて真剣に法的整合性を考えるからこそ発せられたものだった。中には、取締法の問題を問う以前に、質問者の農業経営者としての資質を問わざるを得ないといったものもあった。 今回の特集では、個々の質問に対して単に法解釈の面から回答するだけでなく、農業経営者、農薬の専門家、農薬販売に携わる企業人、生産・消費のコーディネーターと専門を異にする人々に集まってもらい、それぞれの立場から質問の背後に存在する「経営的な意味」「農薬取締法の問題点・矛盾点・不備」「農薬を取り巻く社会環境」「消費者への説明」などまで話題を拡げて語っていただくこととした。 法律の策定者たちが、現場のことを全く考えずに法律を作ることはないとはいえ、個々の現場で発生する様々な矛盾や問題点まで考慮した法律を作ることもまたできることではない。そういった矛盾や法の不備が存在する中で、農業経営をどのように行い、食べる人たちにどう説明していくか。それは正に、その経営者の経営理念に直結している課題である。 ちまたには「安全・安心」という言葉が溢れているが、科学的な根拠に基づく「安全」と食べる人たちの心を示す「安心」が相反することもある。農薬ほどこの乖離が激しいものはないかも知れない。 今回の特集は、そういった様々な見方・意見をそのまま掲載することをその主旨としている。それぞれの経営の中で、“農薬”の位置づけが自ずと異なるからだ。ただし、社会的責任の問われるべき経営者として、という前提条件は変わらない。その視点で本特集をご覧いただきたい。
座談会「食べる人と使う人の視点に立った農薬使用とは」
【出席者】西田立樹(「農薬ネット」主宰)、澤浦彰治(株式会社野菜くらぶ代表取締役社長)、加藤幸子(フリーライター)、森田泰治(仮名・某農業資材販売会社勤務)、昆 吉則(「農業経営者」編集長)


昆吉則(「農業経営者」編集長)今回の改正農薬取締法について、私は7割方評価しているのですが、情報公開や適用拡大の点では更に改革が必要だと考えています。また、この改正法を現実の農業生産に落とし込んでいくに当たっても、矛盾点や問題点が存在しています。そういった意味で、改革をもっと推し進めていくためには、目線の揃った人たちが立場の違いを越えて話し合いながら、様々な方向に働きかけていく必要があると考えています。農薬に関してはそもそもの登録制度にしても、あるいは経過措置にしても問題はあり、寄せられた質問全てに答えを出すのは難しいと思います。しかし、そのことを示すことも法改正を考える上での問題提起になるでしょうし、そういう意図で議論を進めていきます。


Q大麦では、畦畔登録の除草剤がありません


【質問1】稲には畦畔登録の除草剤があるのに、大麦では畦畔登録の除草剤がありません。私の圃場では、1本の畦畔を挟んで左に稲、右に大麦を育てていますが、対処する方法があれば教えて下さい。

森田泰治(仮名・某農業資材販売会社勤務)結論から言えば、対処法はありません。法律の不備だし、登録カテゴリーには「水田畦畔」という分類しかなく、農薬メーカーがこの質問にあるようなケースに合う登録をしようとしてもできない。法律を変える必要があると思います。ただし農地の範囲を示す明確な定義はありませんから、畑の周りを「農地ではない」と考えれば、除草剤を散布してもいいのではないかという解釈も成り立ちます。ただ、飛散の可能性や消費者への信頼の観点からすればリスクがあるし、使用できる除草剤はないと回答せざるを得ないのが現状です。

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