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特集

市場の新野菜―地場野菜編-“地場”のマーケティング戦略

【石川いも】

 消費者の「ちょっとゼイタク」志向にはピッタリの食材である。普通の外食のメニューにはなくても、“ちょっとゼイタク”すると出てくる「きぬかつぎ」。丸ごと茹でて頭をちょっと切って、盛塩を添えて出てくるメニュー。が、これは別に“料理”と呼べる食べ方ではない。家庭でも簡単にすぐできるし雰囲気がある。要は供給面であり、あまり売っていないし高いというイメージがあるが、商系での流通に任せている産地が多いせいでもあるのだろう。地方に行けば、さといもの小いもは別に高くも特別でもない。ところで、本当の名前である「きぬかづき」(衣被ぎ)と呼んでいる地方はありませんか?


【あしたば】

 東京都下の伊豆七島特産のあしたばに、新しい競合商品「源生林あしたば」が登場した。都下産のあしたばは、出荷の9割が東京市場に出荷され、各地に転送されているのだが、入荷量は110t程度(平成14年)。これに対して、企業主導のこの「源生林あしたば」は、今年120t程度を生産出荷するという。産地は茨城県が中心だが、奈良県や埼玉県にも委託生産の産地があり、耐寒性のある選抜種であることから、東日本を中心に拡大していきそうだ。このあしたばは、野菜としてはクセが強すぎて家庭の常備野菜になるためにはまだまだ時間がかかるが、カルコン、クマリンといった機能性成分が、高血圧などの生活習慣病、女性の皮下脂肪がゴツゴツするセルライトという症状に効果があるとされ、宝酒造などが健康補助食品として大々的に販売する計画を打ち出している。その波及効果として、あしたばブームの胎動が見られる。「源生林あしたば」のメーカーであるエンゼリカ(水戸市)は、デパートなどを中心に品揃え商材として地道に普及させていることから、昨年の倍量がマーケットに浸透すれば、それが基本需要になってくる可能性が高い。


【サラダ・オニオン】

 一見すると新しい野菜品目のようだが、本来は、静岡県などに昔からある、乾燥させる前の即売品の“生鮮”たまねぎである。この流れで出てきているのが同県や千葉産の葉たまねぎだといえる。もちろん品種の違いもあるのだが、そのままスライスしてもあまり辛くないというのは、府県産たまねぎ一般にいえること。これを新しいたまねぎ商材というのではなく、昔からある生食用のたまねぎで、産地では良く食べている、といったコンセプトを訴求することで、立派な地方野菜になる。地方での調理法を添えて、通常のたまねぎとの使い方の違いを示すことが重要である。


【葉わさび】

 わさびの産地は意外と多い。東京の料亭用としては静岡や島根に負けても、地場や地方レベルではわさびの生産は存在する。わさびがあれば葉わさびもある。おひたしなどにすると、ほんのりとしたわさびの香りがするという独特の葉野菜であることを、もっと注目すべきだろう。主に静岡産が東京市場に出荷しているが、温泉地である伊豆半島に出かけた人は、必ず食べているのだから潜在需要はあり、それを喚起することは容易だ。

(流通ジャーナリスト 小林彰一) 

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