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特集

市場の新野菜―地場野菜編-“地場”のマーケティング戦略

【特殊だから高く売れるのではない】

昆 地産地消とは、目の前にいるお客さんのことを考えるという、これまで農業界や村に住む人々がサボってきたことを改めてやろうというだけの話です。しかし、農業界や農家が、まず農業を真っ当な商売としてやっていく努力をすること。深い意味で「お客様」という言葉を使えるようになるという意味においては良いことです。そもそも、本来、自分のお客さんであるべき人々を取り戻すことなのですから。しかし、地場という言葉を使う時、もう昭和35年の徒歩一里一時間の距離感からは自由になって欲しい。常呂と東京はつながっているのだというぐらいの距離感をもつことが重要ではないかと思います。

小野寺 確かに東京を見る、世界を見るということによって生産者も徐々に変わっています。常呂町では有機栽培で、非常に匂いの強いニンニクを作っています。これは湧永製薬(株)の滋養強壮剤「キヨーレオピン」の原料になるのですが、自分たちのニンニクが薬品として高い評価を受けているということを知れば、農家は責任を感じて農産物を作ろうとします。

 けれども、特殊なものを作っているのだから、高い値段で売れるはずだという篤農家の発想では絶対ダメだと私は言い続けています。食べてもらって、おいしいと言われてこそ、特別な値段が付く。私たちはカルビー(株)のポテトチップスの原料となっているバレイショも作っていますが、きちんと管理されたバレイショなら、キロあたり30円で買ってもらえる。農業と工業がお互いに土を共有し、商品の評価が情報として生産者にフィードバックされる。そういう場が必要なのです。

昆 人々が飢えていた時代には、作れば何でも売れた。特殊なものであれば、より高く売れた。それが通用しなくなったのが1970年頃からです。大阪万博が終わり、国鉄が「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンを始めたのがその年。富士ゼロックスのCM「モーレツからビューティフルへ」も同じ年でした。そういう意味では、“地産地消”も“スローフード”も“田舎暮らし”も30年前に始まっていた「故郷回帰」というマーケティングコンセプトなのです。日本社会が欠乏から過剰へ、空腹から満腹へと変化するの中で、それが言葉を変えて繰り返されてきているのです。

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