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特集

市場の新野菜―地場野菜編-“地場”のマーケティング戦略

武内 「もの」と「こと」の両立についてはずいぶん議論をしてきました。食材を作るには、想いがなければいけない。それらを付加価値としてよいのだが、これがなかなか地方の人にはできません。有機農業の生産者の場合は往々にして、想いだけで動く人が多い。そして「全て生産者の都合になって、お客様という思想はなく、野菜は分けてあげる」という発想になってしまう。

 土地の特徴、風土、農業への考え方をどうやって作物に結び付けるか。欧州には農場レストランという場があって、そこを中心に食の業界が動いたりするのですが、日本にはそういうものが少ない。行政も農協もやらないし、やはりこのへんのマーケティングは外部の人間が入ってやらないと難しいかもしれませんね。我々の方で出会いの場を作って接触を図る必要があるのかもしれません。

小野寺 生産段階とキッチンとが直接つながって、半年なり1年後を見越した目標を立てられたら理想的ですよね。そうしたら、種苗会社と農協の意向だけで、消費者が受け入れないようなものを栽培してしまうことはなくなるし、生産者の発想が変わっていく。

昆 現代は価値の多様性が意味をもつ時代です。全員をお客さんにしなくても、お客を選ぶことができる。旬が短いことでさえ、希少性の演じかた次第で魅力になりうる。ただそうなると、ビジネスは小さくならざるをえませんし、冷静にやらないと大変なことにもなります。

武内 我々のような買う側と生産者が話し合いながら、ある程度の目途をつけてやっていけばリスクを減らせます。それに自分で売るようになれば情報がとれます。売れて情報がとれるのだから、こんなに良いことはない。ですから、生産者はグループを作り、営業担当者を作ってでも自分たちで売ればいいと思うのですが、若い農家でも、なかなかその一歩が踏み出せなかったりする。「武内さんの言うことはよく分かる」と言うから「じゃあ、やれば?」と水を向けると、「いや別に無理してまでやろうとは思わない」と言う(笑)。

小野寺 ショックを与えないとダメなんですよ。どんなにおいしい作物を作っても、そうでないものと値段が変わらない。あるいは消費者に必要とされないものを作っても、政府がお金をくれるし、そこそこやっていける。これでは、農家は同じことを繰り返すだけです。それほど楽なことはないですから。

昆 やはり求められているのは、ネットワークですね。地の商売を地だけでやっても限界があるということに気付くべきだし、異業種や競争相手と組むことで、お互いメリットを得られる。合理化で自分の首を絞めていることに気付いた量販店までが、地場野菜を取り扱い始めているわけですから、生産者はその棚を利用すればいいのです。肝心なのは想像力と人材でしょう。それらを生産者自身ではすべて解決できないからこそ、ネットワークが意味をもつとも言えます。本日はありがとうございました。

■武内 智
(株)すかいらーく、(株)平成フードサービス副社長を経て、2001年11月から(株)ワタミフードサービス社長。平成フードサービス副社長時代、農・漁業者との直接提携を進め、有機農産物など高品質食材にこだわる居酒屋チェーン「北海道」を展開。直営農場での農業体験を社員教育に取り入れるなど、食と農をつなぐ場としての外食産業の新しいスタイルを追究。北海道有機認証協会理事でもある。

■小野寺 俊幸
1951年北海道常呂郡常呂町生まれ。北海道立農業大学校卒業後アメリカで1年間研修。農協4Hクラブ、北海道農協青年部会長を歴任、1994~96年まで「北海道土を考える会」3代目会長。現在JAところ代表理事組合長。「土地は個人のものではない」「既存共栄」がモットー。自家経営の他、地域内の離農地で仲間との共同経営を行い、地域農業発展の可能性を模索している。

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