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土門「辛」聞

米価大暴落がもたらす農業周辺業界への影響とは

 この多段階流通がどうしてできたか。その理由を考えてみると与信だけだということがすぐに分かる。物流からみれば、大八車が輸送手段であった時代に、町村単位でエリアを決め、そのエリアの小売店に特約店の看板を掲げさせてきた。カネの流れ的には農家は零細かつ貧乏故に与信は町村単位でしか与えられなかったのであろう。その特約店をほぼ都道府県単位でまとめたものが卸という位置づけなのである。商社は、その卸とメーカーの中に入って、卸や小売の与信管理が主な業務である。

 市町村でさえ平成の大合併をやっているのである。当然、こうした流通経路もショートカットされるべきであったが、卸も、小売も、生産者もそれぞれ与信に問題ありで、こうした流通制度がいまも機能を果たしているのである。これがために3割近いマージンを負担させられる生産者はたまったものではない。

 ここ数年、本誌読者のような生産者はメーカー直結の資材仕入を始めているだろう。よいメーカーか悪いメーカーかを区分けするには、よい商品を作っているか悪い商品を作っているかだけでなく、よい商品をよき生産者に直接売るかどうかという見極め方法もあるのだ。

 よきメーカーなら、中間流通をなくしてユーザー直結してくる。もっとも買い手たる生産者も、メーカーの信頼に応えて、支払いはきちんとしなくてはならないのは言うまでもない。この業界の七不思議の一つに盆暮れ勘定がまだ残っていることがある。農産物を収穫してから払ってやる。不作なら、ご免という悪しき商慣行がいまだに残っている。こんな生産者の作った農産物、だらしない支払い態度に正比例してマーケットでは絶対に信用はされない。この程度の生産者が書いたというトレーサビリティなんか誰が信用するだろうか。

 商社や卸や小売は与信問題で錯覚しているように思えてならない。自分たちにしか与信はできないと思っているかもしれないが、競争相手が出てきているのだ。農家相手の与信なら商社のマージンに毛が生えた程度の金利で売掛債権を回収してくれる会社がいくつもある。現に知り合いのメーカーのところにも、農家に直売した場合の代金回収を代行する業者が何社もやってきている。笑い話だが、九州某県では農家お断りという回収業者もいるらしい。業者が与信を引き受けられないぐらい某県の生産者は信用度が低いのである。仕方なく、農協に与信してもらうため、農協経由で売るようになったという。農協は、農家の貯金を預かり、農協共済にも入ってもらっている。万が一の場合は、それを差し押さえればよいのだ。

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