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江刺の稲

旬を冷凍する和郷園の取り組み

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第89回 2003年07月01日

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 旬の時期に思い切って生産し、それを年間通して出荷する。主体は外食や加工仕向けから始まるだろう。さらに、わざわざ冷凍工場に木内氏の愛嬢の名前に由来して「さあや’Sキッチン」と名前を付け、その商品イメージを含めた商品化を進めている。それは、量販店でも、消費者の生活スタイルの変化に合わせていつでも使える最高の生産者の旬を提供する商品となることを狙っているためだ。

 多くの農業関係者は輸入野菜の増大によって国内生産が圧迫されるというが、すでに一部の市場では輸入野菜の方が国内産地のものより品質が優れている故に高い価格が付いている。しかし、売り場を失っている国内産地とは、生産コストではなく市場の変化への鈍感さや品質の悪さゆえに顧客に愛想尽かしをされているのではないか。

 もちろん、量販店や外食業などによるご都合主義の調達が産地を圧迫することがないとはいえない。しかし、最後の答えを出しているのは消費者なのである。日本人は、生理のレベルで国産に手がいくのだ。例えばブロッコリーなど、輸入の多い農産物で明らかな価格差があるものでも、品質さえ確かであればスーパーの棚は国産品から売れていく。

 大きなチャレンジに取り組む若い彼らに、需要者であるとともに、であればこそ本物の支援者である顧客たちは口々に話していた。和郷園の発足段階から単なる需要者としてではなく彼らの農業経営者として成長を励ましてきた生協理事長は、夜を徹して和郷園の未来を語り合った思い出を語り、今回の事業を我が事のように喜んでおられた。大手外食業の経営者であり外食業界団体の会長でもある人は、わずかの時間を割いてお祝いに訪れた。そして、冷凍工場やその製品を見て、ロス低下のための管理方法や今後の品質改善の方向性や出荷基準へのヒントなどを若い木内氏に伝えておられた。

 すでに誰も腹を空かしてはいないのだ。また、消費者は価格だけを評価の基準としているのではなく“満足”を求めているのである。そして、その満足の市場には多様な可能性があり、日本農業だからこそ、日本人の農業経営者だからこそ演じることのできる農業経営があるのだ。

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