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高設イチゴの実用栽培技術

9.気温・湿度管理


 夜間の気温も同様で、温風暖房機の設置位置、送風ダクトの配置方法、温度センサーの位置等によって、イチゴの周辺気温が期待している温度にならないことがある。

 白熟期から収穫期に達した果実の果形で、管理されている気温が高いか低いかをある程度判断できる。イチゴの果形は、品種によって様々で着果順位によっても異なるが、肩の部分から先端にかけて緩やかな凸曲線を描いて細くなるのは共通している。気温が高く管理されると、緩やかな凸曲線が、凹曲線になり、肩と先端のほぼ中央付近がやや細くなる。反対に低温で管理されると、凸曲線が豊満になる。


●培地温確保のための気温管理の弊害

 無加温ハウスや無加温培地の高設栽培の場合、晴天の少ない産地では、夜間の培地温が9℃以下に低下し、昼間の培地温が18度以上に達しないか、5時間以上保持できないことがある。このような施設では、培地温を確保するために、日中の気温を30℃近くまで高く管理することが行われている例がある。また、夜間の培地温の低下を少なくするため、ハウスに加温施設がある場合には、夜間の最低気温を9℃以上に管理している例もある。しかしこれらの管理は、呼吸消耗を増加させ、収量が低下するとともに、果実の内容が充実する前に着色が進み、品質の低下を招く。好適培地温が確保できない場合には、別途培地を加温する装置を設置すべきである。


●湿度管理

 早朝にハウス内に入ると、イチゴの葉の鋸歯の先端に小粒の真珠のような水滴が見られることがある。これを溢液といい、根が健全で順調に生長している証拠である、管理環境がイチゴに適していることを示している。イチゴは夜間の湿度が高いと根圧が働き、夜間の吸水が促進されて溢液が出る。このような状態ではカルシウム欠乏症のチップバーンが発生しにくい。

 しかし、高設栽培ではハウスの床面をマルチ資材で覆い、地面からの蒸発を抑制している場合が多く、夜間の湿度が低下しやすい。また、温風暖房機が作動すると、湿度が低下しやすい。灰色かび病の発生防止には湿度を低く管理すつことが有効であるが、イチゴの健全な生長のためには、夜間の湿度を高く管理すべきである。灰色かび病は開花期から発生しやすいので、少なくとも開花期までは夜間湿度を高くすることを優先すべきである。

 ところで、灰色かび病の発生は、単に湿度が高いところで促進されるのではなく、結露するか否かで異なる。早朝にハウス内に陽が入ると、果実よりも気温の上昇が早くなり、冷水を入れたコップの表面に結露するのと同じ様に、結露現象が起こる。この結露水が灰色かび病の胞子の発芽や菌糸の生長を促すのである。これは、早朝に攪拌扇や温風暖房機を作動させ、送風によって結露水を乾かすことで防ぐことができる。または早朝に数分間換気するだけでも、ハウス内湿度を低下させるとともに、気温の上昇を抑制して、果実などと気温との温度差を少なくすることで結露を防ぐことができる。

 昼間の湿度が低いほど、果実の品質は向上する傾向にある。昼間も保温カーテンを開放せずにおくと、換気がほとんど行われず、湿度の低下が緩慢になる。光環境や温度環境を考慮すればカーテンの開放は必ず実施すべきである。

 簡易な湿度管理の手段は、ベッドの下に稲ワラなどの吸湿性資材をある程度の厚さで置き、十分に散水しておくことである。ハウス内湿度が低下すると、稲ワラから水蒸気が発生して、湿度上昇に効果がある。反対にハウス内湿度が上昇しすぎると、稲ワラが吸湿して、湿度を低下させる効果がある。

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