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現地報告イスラエルアグリテック'03レポート

受け継がれる開拓精神

9月16日から21日にかけて、国際農業展示会アグリテック2003への参加のため、イスラエルを訪問してきた。この機会に、レバノン国境に接する最北部からエジプト国境に近い南部、西に面するヨルダン国境近郊まで、イスラエル農業の様々な局面を垣間見ることができた。イスラエルは極度の高温、乾燥、夜間の冷え込み、水不足、砂地の痩せた土地柄など、作物生産条件において決して恵まれた環境とはいえないところが大半をしめている。イスラエル農業を誇る際、そういう条件だからこそ点滴灌漑技術をはじめとした先端技術が生まれた経緯について語られることが多い。しかし、筆者が見てきた技術とは、イスラエルの農業経営者が、自ら選んだマーケットで競争に勝ち続けるためだけに産官学が共同して創り上げてきたツールに過ぎなかった。ガリラヤ湖の北側で果樹栽培を営む20代後半の経営者ニール・クローズマンはいう。「自分の名を傷つけるような商品は何があろうが絶対出荷しない。すべての農作業、技術、管理はその確率を減らすためにあると思っている。世界中にいるお客さんを1度でも落胆させることは許されないからね」。技術への驕りではなく、顧客を通して見出す自負心、これが彼らの農業経営を支える原理原則である。(編集部 浅川芳裕)

 アグリテックの歴史は意外に古く、はじまりは1979年である。数年に1回のペースで開催され、今回で15回目を迎える。イスラエルの農業関連メーカーにとっては、新商品を国内に向けてだけではなく、海外からのバイヤーに向けてアピールできる絶好の機会である。事実、イスラエルが世界に誇る灌漑技術を発表してきたのもこの展示会である。

 日本の農業関係者の中でも知る人ぞ知る展示会で、前回99年には日本から本誌編集部のツアーを含め、200名以上が参加した。今回は、開催時期に不安定な政治情勢が重なったためか、展示会場を回った限り、日本からの参加者には一人も出会わなかった。主催者に聞いたところ、集計してみないと分からないが、日本からのビジターは事前登録でさえもほとんどいなかったという。

 しかし、他国の農業関係者の反応は全く違っていた。韓国、オーストラリア、イタリア、ブラジルをはじめ38ヶ国の農業大臣が、オープニングパーティーに来賓として出席していた。ドミニカ共和国からは、大統領が訪れていた。インドからは、各州の農業大臣が農業関連メーカーを引き連れてやってきていた。

 中国の勢いは更に凄まじかった。特に黒龍江省の有機農産物販売会社が150平方mのブースを借り切り、農産物輸出国イスラエルのバイヤーに向けて中国有機農産物を売り込んでいたのは驚きだった。農業資材の展示会のため、ほとんどバイヤーはおらずブースは閑散としていたのだが。売ることが目的というよりは、中国農産物の品質の高さを世界の農業関連業界人に誇示することが狙いなのかも知れない。また、両政府間の取り組みとして、イスラエルの灌漑技術・資材が積極的に中国(特に黒龍江省)に導入されていることからも、パートナーシップを示す好機であったのだろう。事実、イスラエルの農業大臣と中国からの出展企業・視察団は長時間に渡り面談していた。

 出展企業数は、前回並の250社超で、来場者数は本稿執筆時(19日)では集計が終わっていないが、主催者側の話では前回並だという。不安定な政治情勢に関わりなく、世界各国の農業関係要人を集め、着実にビジネスにしていくイスラエルのアグリビジネスの魅力と凄さはどこにあるのか、探ってみよう。

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