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旅の曲者

サッとひと拭きする前に

エジプトに暮らしていた頃、アルバイトで日本人観光客相手のガイドをしていたことがある。その際、レストランに入ると、よくお客さんから「生野菜を食べても大丈夫ですか」と質問された。ぼくはふだんから市場で買った生野菜を食べていた。エジプトの野菜の多くは日本のものにくらべて味が濃い。とくにトマトやニンジンなどは、野性味のある青臭さが郷愁をかきたてた。だから、いつも当然のように「大丈夫ですよ」と答えていた。
 エジプトに暮らしていた頃、アルバイトで日本人観光客相手のガイドをしていたことがある。その際、レストランに入ると、よくお客さんから「生野菜を食べても大丈夫ですか」と質問された。

 ぼくはふだんから市場で買った生野菜を食べていた。エジプトの野菜の多くは日本のものにくらべて味が濃い。とくにトマトやニンジンなどは、野性味のある青臭さが郷愁をかきたてた。だから、いつも当然のように「大丈夫ですよ」と答えていた。

 ところが、あるときそれを聞いていた添乗員から、「困りますね。お客さんにはエジプトでは生野菜はいっさい食べないようにといってあるんですよ」とたしなめられた。しつこく注意を受けていたのか、そのグループの人たちは、最高に美味しい搾り立てのオレンジジュースにすら口をつけようとしなかった。

 たしかにエジプトでお腹をこわすお客さんは少なからずいる。現地に住んでいても、夏になると一度や二度は腹を下してしまうことはあった。しかし、それは食べ物のせいというより、むしろ暑さなどによる疲労のためであるように思われた。まして、ツアーでやってくる人などは20時間も飛行機に乗ってきて、そのままほとんど一睡もすることなく炎天下の砂漠へと観光に向かう。寝不足と疲労、そこに慣れない食事でお腹の具合をおかしくしてしまうのも無理はないとは思う。

 とはいえ、あらゆるリスクを避けようとするあまり、いっさいの生ものに手をつけないのは行き過ぎではないか。現地スタッフが気をきかせて持ってきた新鮮なナツメヤシの実にまで、まるで汚物でも見るような視線を浴びせるのには、正直やりきれないものを感じた。

 ところで、こうしたツアーが終わると、日本から持ってきた不要な荷物をくれるお客さんもいた。主にちょっとした日本食や雑誌などであるが、海外に住む身にとって、これはとてもありがたかった。

 けれども、ある時期から、その中に妙な品が増えてきた。いわゆる抗菌・除菌グッズの類だった。その頃、ぼくは日本に抗菌ブームとでもいう風潮が広がっているのを知らなかった。だから、このような見慣れぬ品をほとんどの人たちが持っているのが不思議だった。そうした品を現地の人にあげているお客さんもいた。あとで便座除菌ペーパーをもらったエジプト人から「これは何だ?」と訊かれて、説明に窮したことがある。

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