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現地報告イスラエルアグリテック'03レポート

展示会のハイライトとメーカーの商魂

企業活動がグローバル化した今日、世界初の技術や商品が一同に会する展示会などあろうはずもない。特に農業においては、作物の複雑な生理メカニズムと地域によって違う土壌・気候条件で開発される技術は、工業製品のようにわかりやすい世界標準もない。しかし、世界の農産物の生産競争においてひとつの趨勢はある。競争力があるのは乾燥地帯の農業だ。古代から豊富な水源を誇る川があり肥沃な土壌を持つ地域より、アメリカやオーストラリアなど水が少ない地域の方が生産力があるという逆説が定説になって久しい。これは水がなく土壌養分がない分、作物の求める最適の環境を設定するのが容易だからだ。日本では管理技術と呼ばれるが、それこそが乾燥地域での農業の全てである。「作物に最適の環境を設定する以外、他に何をするのか?」というわけだ。その先端を走るのがイスラエル農業である。
灌漑技術を制するものが農業を制す


 企業活動がグローバル化した今日、世界初の技術や商品が一同に会する展示会などあろうはずもない。特に農業においては、作物の複雑な生理メカニズムと地域によって違う土壌・気候条件で開発される技術は、工業製品のようにわかりやすい世界標準もない。しかし、世界の農産物の生産競争においてひとつの趨勢はある。競争力があるのは乾燥地帯の農業だ。古代から豊富な水源を誇る川があり肥沃な土壌を持つ地域より、アメリカやオーストラリアなど水が少ない地域の方が生産力があるという逆説が定説になって久しい。これは水がなく土壌養分がない分、作物の求める最適の環境を設定するのが容易だからだ。日本では管理技術と呼ばれるが、それこそが乾燥地域での農業の全てである。「作物に最適の環境を設定する以外、他に何をするのか?」というわけだ。その先端を走るのがイスラエル農業である。

 アグリテックの英文パンフレットに「未来農業がココにあります」とある。自分達の農業技術を他国からの訪問客に紹介する時、未来農業と豪語できるのはなぜか。それは、乾燥地帯に限らず世界的な水不足時代の農業において、「灌漑技術を制するものが農業を制す」ことを自らの実践において実感しているからに他ならない。

 そんな先入観を持って、いざアグリテックの展示会場を回ってみた。


人類は『水遣り』のために、今までどれだけ時間を浪費してきたのか


 会場は大きく三つに分かれている。灌漑・酪農・種苗関連の出展が並ぶメイン会場、ハウス資材が中心のサブ会場、そして農機・ハウス・調製メーカー中心の野外会場だ。

 メイン会場に入って、まず目を引いたのがモトローラ社(http://isra-el.motorola.com/)のブースだ。同社は今では携帯電話のトップメーカーとして有名だが、灌漑システム分野には1970年代から進出している。灌漑の自動化は、「水・エネルギー・労働の3つの最も重要な資源を節約する」をモットーに、徹底的な水源の集中管理による遠隔灌水操作システムを公開していた。各種システムのひとつ IRRInetは、クライアントサーバーひとつで、最高250のバルブ操作と、管理する圃場毎の条件にあった最高200の灌漑・施肥プログラムの設定が可能だという。データ管理によるバルブの調整機能だけでなく、モニタリングカメラで圃場の状態をリアルタイムで観察できるシステムもあった。

「人類は『水遣り』のために今までどれだけ時間を浪費してきたのか想像もつかない。水・エネルギー・労働の節約以上に、時間の節約が最高の節約だ。モトローラといえばアメリカの企業みたいだが、こと当社の灌漑システムについてはすべてここイスラエルで生まれた」と、案内してくれたスタッフは自信たっぷりに話していた。水遣りを時間の浪費と考える発想には感じ入ったが、実際このモトローラのシステムがどのくらいイスラエル農業で応用されているのか、果たして人類はサーバーの前に座ってどれくらいの圃場を管理できるのか。
「すべての答えはこの中にある」と手渡されたCD‐ROMには、各パーツの仕様とシステム設計の話ばかりで、現実の農業現場での実用例には全く触れていなかった。実力の程をここで解説できないのは残念だ。最後に営業部長がやってきて、「そろそろ日本進出を考えている。いいところに来てくれた。これも何かの縁かもしれない。我々のために君にできることがあればいつでもメールをくれ。君の質問の答えは、これに入っている」と言って、同じCD‐ROMをくれた。

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