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特集

農業特区と農外企業の参入で規制緩和をビジネス・チャンスに

今年4月からいわゆる「構造改革特区制度」がスタートした。農業関連では、(1)株式会社やNPOなどの法人でも、農地を借りて農業経営を行うことができる制度、(2)農家等でも市民農園の開設が可能となる制度、(3)都市出身者などのニーズに応えて農地取得の下限面積を緩和する制度、(4)農業体験のための施設運営や民宿業を行うことが可能となる制度 などが申請可能なものとして挙がっている。申請受付は今年の4、7、10月、来年の1月で、農業関連の特区としては、7月分までで計32件が認定されている。政府は今後、全国的な展開も視野に入れてこの特区制度の結果を評価する方針だ。 いままで「農業を守る」という名目の下に、農家と行政、農業関連団体が一体となって「農業」をがんじがらめにしてきた。それは今回特に注目されている農地法の緩和による非生産法人の農業参入についてもいえる。営利を優先する企業の参入は、農地の荒廃や無法状態を招く可能性が高いと反対する人々がいるが、企業参入による地域農業の発展や雇用創出の可能性もまたあるはずだ。参入企業とのパートナーシップを組むことで、経営発展のツールともなり得るだろう。規制緩和とは、その制度を利用する人々だけでなく、彼らを受け入れる行政や農協、農業者の側に理解がなければ現実のものとはなり得ない。 そこで今回は、地域や農業経営にとってのビジネス・チャンスという視点から、農業参入に手を挙げた企業にインタビューした。また本特集では、特区に関わる行政や地域の農業者のあり方についても考えていく。

座談会「特区制度で、外食企業と生産者が共有する“農業”の夢」

【出席者】武内 智(ワタミフードサービス(株)常務取締役、(株)ワタミファーム社長)、石橋 明(JA山武郡市睦岡支所園芸部有機部会環境委員)、昆 吉則(『農業経営者』編集長)まとめ:秋山 基


昆吉則(「農業経営者」編集長) 今回、千葉県と山武町、北海道瀬棚町が農業特区を申請し、国の認可が下り次第、これらの地域でワタミフードサービスが本格的に農業生産に進出することになりました。これまでは企業の参入に対して、農業界には色々と抵抗や後ろ向きの反応が多かったわけですが、私たちはむしろ、これを農業経営者たちがビジネス・チャンスととらえることで、企業が持つ資本やノウハウを積極的に利用できるのではないかと考えています。まずは、特区申請に至った経緯についてお話しいただけますか。

武内智(ワタミフードサービス(株)常務取締役、(株)ワタミファーム社長)ワタミファームでは、これまでも有機農産物の生産を手がけてきましたが、農地法の関係で直接農地を借りることはできませんでした。そこで私自身が農事組合法人の理事になり、土地を借りて、ワタミファームは作業を受託する。そういう形の契約を結んで農業に入ったわけです。けれども農事組合法人では他の地域で農業ができません。農業生産法人としての株式会社が最も好都合なのですが、これもなかなか難しい。

 そんな中で農業特区の話が出てきたのです。これはいいなと思って色々調べていたところ、千葉県から「特区に関心があるそうですが」と連絡をもらったのがスタートです。

昆 石橋さんとワタミとの関係はいつ頃からですか。

石橋明(JA山武郡市睦岡支所園芸部有機部会環境委員)4年ぐらい前、武内さんがまだ平成フードサービスにいた頃、JAの役員だった私が野菜を売り込みに行ったのがきっかけです。それで取引が始まりまして、2年ちょっと前に、ワタミとして千葉で有機野菜を作りたいという相談を受け、ファームの設立に向け、部会を挙げて畑探しを手伝ってきました。


【「特区」であっても、助成措置はない】

昆 実際に農業特区の制度を利用しようとすると、色々と問題や障害があったと思うのですが。

武内 「特区」なのだから、行政の助成措置などのメリットがあると思っていたら、これがないんですね。土地を借りるにしても、自分たちで交渉しなければならない。しかも役所には膨大な書類を出す必要があるし、地元の人たち、議員、様々なところに顔を出して了解を取り付けないと申請まで進まない。そのための会議、会議で1週間に何回会議をやったか分からないぐらいです。農業をやるのになんでこんな大変な思いをするんだろうと思いました。

石橋 まず行政の方に窓口も受け皿もありませんでしたから、大変だったと思います。地元には、企業が来るとなると、何らかの戦略があって産地に入ってきて、買い占めでも始めるのではないかという表面的な見方があるのも事実です。我々の場合は、特区の話が出る前から、武内さんとの付き合いを通じてワタミさんのことをよく知っていましたが、いきなり知らない会社がやってきて、「農地を貸してくれ」といっても、おそらく貸す人はいないでしょう。

昆 山武町の場合は、特区適用をきっかけに町の知名度を上げようとか、そのような意向や動きもあるのでしょうか。

石橋 行政の力を借りないとできませんが、そのような何か旗を掲げるような形が望ましいと思っています。「山武町に行けば、有機生産者がたくさんいる」といえるような。

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