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【江刺の稲】
安心なコメ生産者は73人?
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第96回 2004年02月01日
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古い話になるが昨年12月、地下鉄で朝日新聞社発行の週刊誌「AERA」の中吊り広告を見た。いわく「農業取材30年で発見、安全な米農家73」。早速「アエラ03年12月29日―04年1月5日合併増大号」を買ってみた。
誌面に出ているタイトルは中吊り広告とは少しニュアンスが違った。「農業取材30余年、見つけた食の安全/米」という袖見出しで「無農薬が冷害に勝った」とあり、ページをめくると73人の農家あるいは生産法人の名前が一覧で出ている。その中に数名の本誌読者、それもよく存じ上げている名前もあった。その記事の筆者は農政記者としてはかつて僕も評価をしてきた元朝日新聞記者の長谷川煕氏である。
大朝日新聞社の有力雑誌であるアエラの記事について小欄が噛み付くのを“ごまめの歯軋り”と笑われるかもしれないが、有力誌であればこそ放ってはおけないのだ。
そもそもがその中吊り広告である。誌面には出てこない“安全な米農家73”という言葉遣いを中吊り広告に大書きすることは、雑誌の宣伝効果を越えて、満員電車に揺られる人々に「それならその73人の農家以外の人が作る米は危険だというのだろうか?」と思わせるだろう。それはその73人以外のまともな農業をしている人々の仕事への誹謗ではないか。
また、その記事を読む人たちにとっては、現在流通している農業や米の安全性というものに大きな誤解を与える内容なのだ。それは人々の不安を煽ることにしかつながらず、農業生産物の安全性を高める努力や失われている食品供給に関する信頼を取り戻そうとする努力に対する無益ないいがかりであるというべきである。
長谷川記者に問いたいのだが、それでは、ここに紹介された73人以外の生産者の米は危険であるというのか?
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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