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特集

有機農業を通して考える農業技術とは何か



【●手をかける以上に水田は働いてくれる】

阿部 以前、農業試験場に勤務して知ったのですが、カミナリの直前には、イネが一斉に開花するのです。「稲妻」と言うのは本当だなと思いました。
宮嶋 カミナリは大気のイオン化ですからね。
阿部 ええ。高圧線の下の植物もよく育ちますし、電気が植物に与える影響はすごいのです。炭については、静岡などで昔、炭焼き小屋があった場所の下流部ではワサビがよく採れるという話を聞いたことがあります。おそらくこれも経験で知っていたのでしょう。
 私は水田の電位を測定していますが、田んぼにも決まった電位変動があるのですよ。規則的なリズムで動いている。それと、うちの田んぼで水のpH値を測定したところ、9もありました。そんな強アルカリになっているなんて測ってみるまで知らなかった。水はそんな状態でも、藻が生育している部分は数値が小さく、土壌に近付くにしたがってpHが緩やかになります。よく弱酸性がいいと言われますが、弱酸性は一部分だったのです。

関 土は不均一な方が生産力は高いんですよ。バラバラで、空気についても、よく含む部分とそうでない部分があったりする方が生産力はあります。
阿部 私が手をかける以上に田んぼは働いてくれていると感じます。これまでは雑草を抑制するため、代掻きにかなり精度を要求していました。しかし観察していると、私が付けた足跡から生育してくる藻類がある。藻にとっては足跡が育ちやすい環境なんだなと思うと、水田はどこも同じ深さでなくてもいいのかなと(笑)。管理の面ではきめの細かさが必要だけれども、良かれと思ってしたことが逆効果になることもあります。そういう意味では私は最近、非常におおざっぱになりつつある。
 有機農業に切り換えた時期は、私も宮嶋さん同様、こんなことで生活できるのかというぐらい収量がひどかった。今はそうではありませんが、よく農家は反あたり10俵を意識するでしょう。しかし経営を継続させるためには本当に10俵採っていいのかと考えるようになりました。土の潜在力を100%引き出してしまっていいのか。翌年のために多少、力を残してやった方がいいのじゃないかと。

宮嶋 それは残してやった方がいいですよね。
昆 昔のお百姓が裸足で鍬を振って身に付けた智恵や、伝統的な気象・方位の知識など、それらには色々矛盾もあるでしょうが、科学に照らして説明することは農業経営に有益だろうと思います。同時に、土壌分析や勉強会と言うと、対症療法的なとらえられ方をされがちなのですが、私はそこから始める勉強が大切だと感じます。

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