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【江刺の稲】
吉野家牛丼フィーバーの後で
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第97回 2004年03月01日
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毎日新聞2月13日付け朝刊は、日本経団連の奥田碩会長が、BSEの影響で牛丼の吉野家に客が「食べおさめ」の行列をつくったことについて、12日の記者会見で「(牛丼がなくても)死ぬわけでない。日本人は右から左へ早くふれやすい、単純な国だと感じた」と牛丼フィーバーを皮肉ったと報じている。
筆者も同感だが、少し違った感想も持った。むしろこういう“事件”が起きる度にここぞとばかりにはしゃぎ回るTVや新聞の在り様に、「煽るなよ。日本人はもう少し成熟した国民になっているのではないかい。記者さんよ、もっと伝えなければならんことがあるだろーが」と毒づきたくなるのだ。
そもそも、数年前にイギリスの農場で写されたホルスタイン種の牛がよろけ、のた打ち回るおどろおどろしい映像を繰り返し流し、人々の恐怖心を煽ってきたメディア、日本でのBSE発生から行政の対応の悪さを批判していたメディア、全頭検査という安心ではあるが極めて大きなコストを要し本当にそれが科学的と言えるかどうかには疑問の残る検査システムを手放しで例賛したメディア、さらには、ついこの前までアメリカで見つかったBSE感染牛発見について大騒ぎしたメディア。その舌の根が乾かぬうちに、これまで騒ぎ立ててきた食の安全や技術批判はすっかり忘れてしまったかのごとくの、“サヨナラ牛丼フィーバー”報道。
筆者も同感だが、少し違った感想も持った。むしろこういう“事件”が起きる度にここぞとばかりにはしゃぎ回るTVや新聞の在り様に、「煽るなよ。日本人はもう少し成熟した国民になっているのではないかい。記者さんよ、もっと伝えなければならんことがあるだろーが」と毒づきたくなるのだ。
そもそも、数年前にイギリスの農場で写されたホルスタイン種の牛がよろけ、のた打ち回るおどろおどろしい映像を繰り返し流し、人々の恐怖心を煽ってきたメディア、日本でのBSE発生から行政の対応の悪さを批判していたメディア、全頭検査という安心ではあるが極めて大きなコストを要し本当にそれが科学的と言えるかどうかには疑問の残る検査システムを手放しで例賛したメディア、さらには、ついこの前までアメリカで見つかったBSE感染牛発見について大騒ぎしたメディア。その舌の根が乾かぬうちに、これまで騒ぎ立ててきた食の安全や技術批判はすっかり忘れてしまったかのごとくの、“サヨナラ牛丼フィーバー”報道。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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