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農業経営者ルポ「この人この経営」

変革の今を次世代が担へ!

  • (有)ファミリーファーム夏井/北海道名寄市 取締役会長 夏井岩男
  • 第59回 2004年05月01日

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夏井岩男氏。旭川から北に約80km、名寄市を北限の野菜産地として育てた中心人物である。同氏は (有)ファミリーファーム夏井を法人化して、6期目に入る2月1日を期に二人の息子たちに経営委譲した。社長に長男の明弘氏(36歳)、次男の光明氏(29歳)を専務取締役として、岩男氏は代表権の無い会長に就任した。
 夏井岩男氏。旭川から北に約80km、名寄市を北限の野菜産地として育てた中心人物である。同氏は (有)ファミリーファーム夏井を法人化して、6期目に入る2月1日を期に二人の息子たちに経営委譲した。社長に長男の明弘氏(36歳)、次男の光明氏(29歳)を専務取締役として、岩男氏は代表権の無い会長に就任した。

「あとは楽しい生活文化と経営文化の伝承。孫育成。それも生産者としてでなく第一消費者として。健康さも含めて。それには私自身が健康じゃなければね。それと、経営戦略は考えてきたが、『なぜ?』という問いが残っている。見落としていた価値観のことをこれからの人生プロジェクトとして考えたい」

 農業を手伝うのは当たり前だった幼年時代。中学を出て50年。昭和32年の名寄農業高校季節定時制卒業から数えて47年。6年間の闘病生活の後、昭和44年に名寄市智恵文に農場を移してから34年目にしての経営委譲である。

 本誌の通巻100号を記念する経営者ルポとしてそんな夏井氏の世代交代をお伝えしたい。


成長と変革の時代 だから次世代へ


 夏井岩男・千代子の会長夫妻、新社長の明弘氏と奥さんの政美さんと士郎君、若菜ちゃん家族、そして光明氏も先頃大阪出身の静加さんと結婚して、(有)ファミリーファーム夏井は三世代三家族で構成される家族農場となった。

 夏場には国内外の研修生やアルバイト、パートなど24、5名を雇用し、約40haの野菜生産・販売に取り組む。機械や出荷用トラック、大型の予冷倉庫など、規模拡大を進めるための機械装備は十分整えているが、同地域は農業後継者も多く思うに任せないでいる。作物はアスパラガス、スウィートコーン、カボチャ、ユリ根、キャベツ、レタス、ハクサイ、ビート他。輪作、深耕と有機質還元、土壌分析を欠かさず、土壌pH調整に配慮した最小の単肥配合による施肥。そして、健康な土作りによる作物の健全化を前提として、冷涼な気候を活かして最小化できる農薬管理。

 バブル期には1億数千万円という売上を上げる時代もあったが、平成15年度の売上は約7,000万円。インターネットによる通販や本誌を通じた贈答品需要等に向けた直売もかねてから行なってきた。さらに今年度からは野菜の品質評価を前提に、ファミリーファーム夏井の個選による大口販売が開始されることになり、大幅な増収が期待されている。しかし、

「僅かな口銭であるのなら、農協に落としてもそれは付き合いの内」

 かつての農協組合長で野菜産地化の中心人物でもあった夏井氏ゆえの言葉だろう。

「今の日本は平成維新。それは若者が担うべきもの。大変な時代だからこそ交代するのです。それを若者の感性で体験しつつ乗越えていってもらいたい。ハングリーな時でないと勉強にならない。それを彼らに体験してもらおうということです」
 夏井氏の言葉は、後継者に対して、もっと大きな視野で時代をリードする経営者の責務と可能性に遊べと言っているように聞こえた。

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