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特集

創刊100号記念特集 今こそ枠組みの転換を


 今日までの施設園芸の発展に寄与した技術商品を大別すると、被覆資材、ハウス構造部材、環境制御装置、栽培管理装置の4つを挙げることができる。


1.被覆資材の発展


 温室の原点は紀元前に遡り、中国陜西省西安において紙の被覆温室で冬季にキュウリを栽培したのが最初とされている。わが国における温室の原点は、今から400年前の慶長年間、静岡三保において油紙障子を被覆し有機物の発酵熱を利用した温床から始まったと見られる。

 今日に見る施設園芸の発展には、被覆資材の技術開発とその実用化が極めて大きく貢献している。わが国の施設園芸の特徴は、ガラス室が少なく、施設の大部分(96%)がプラスチックハウスであり、被覆資材として農ビ(農業用ポリ塩化ビニル)が広く使用されているということである。ポリ塩化ビニルの農業での利用は昭和26(1951)年からであり、当初、温床育苗への適用やホットキャップとしての利用が検討された。当時の資材はすぐに変質するなど品質的に問題が多く、幅も狭く実用化への困難は想像を絶するものであった。

 昭和20年代の後半から30年前半にかけて、様々な種類のプラスチックフィルムが開発された。その中でも農ビ、農ポリ、農サクビが主に利用されるようになったが、特に外張り用として農ビが一般的に利用されているのは、わが国特有の現象である。農ビは燃やすと塩素ガスを発生する。欧州では、第一次世界大戦において毒ガスとして塩素ガスが使用されたため、農ビの利用が敬遠されたのではないかと考えられる。

 近年、農POやフッ素フィルムなど多彩な資材が急速に普及し始めている。特に、フッ素フィルムは10数年間にわたる長期使用が可能であり、近未来型の被覆資材として注目されている。更に、紫外線カットフィルムをはじめとして、防滴や防霧、害虫抑止、雑草抑制に効果を発揮するなど各種の機能性を持つ資材の開発とその実用化が進展している。

 一方、多量に排出される使用済みプラスチックの処理が、環境保全の上から大きな社会問題となっており、その適正処理が求められている。

 なお、マルチフィルム利用の場面では、生分解性資材なども開発実用化されつつある。


2.施設構造の形態や部材の変化


 フィルム利用の当初は、フィルム幅が狭く、接着技術も十分ではなく、ハウスへの適用は困難であり、温床やトンネルへの利用が主たるものであった。しかし、新たな技術開発によりフィルム幅が広くなり、接着技術も向上し、トンネルから単棟ハウス、さらに大型連棟ハウスへのフィルム利用が可能となった。これに伴い、施設の構造部材も大きく変化した。古くから利用されてきた竹幌や木骨に替わりパイプが利用され、今日では鉄やアルミ骨材のハウス構造が主流となっている。また、昭和42(1967)年の豪雪による全国的な施設災害を契機に施設の安全構造基準が検討され、これに基づく施設が建てられるようになった。なお、施設の形態や規模も大きく変化し、5,000平方mを超える大規模ハウスも実現している。

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