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特集

創刊100号記念特集 今こそ枠組みの転換を


 他方、そうでない多くの農家は農業への思いは愛憎相半ば。気持ちは脱農に傾きながら、自由にやっている農業経営者のことをうっとうしく感じるような状況です。そのことでムラ社会と農業経営者の間がぎくしゃくした関係になっていく。


国が作った対立構造をいかに越えるか


昆 かつて時代を先取りした農業経営者たちには葛藤がありました。大潟村あきたこまち生産者協会(87年設立)がよい例で、弾圧に近い状況に置かれながら、成長を遂げましたよね。減反せずにコメを自分たちで売り始めた人たちは農政へのアンチテーゼとして闘った。結果として派閥が生まれてしまったのですが、第2世代になると、派閥と関係なく付き合えています。
大泉 大潟村では、第1世代と第2世代も派閥を越えて手を組み始めたでしょう。売れるコメ作りと本格的な水田畑作という同じ方向を見ようとしています。結局、過去の対立は農政が作った構造であって、農村そのものは経済の流れに対応する力をもっているんですよ。

昆 ところが今年の米政策改革大綱の実施を巡っては、各地の村々で葛藤が起きています。転作について言うなら、行政に言われて転作するような農家ではなくて、コメは過剰になると予想して自らいち早く作目転換した人が、成功しているわけですよね。にもかかわらず、集落の中にはまだかつてと同じような悩みが残っている。

 農水省は政策によって何かできるとはもう考えていません。お手上げ状態なのですから、今後は農業経営者と食に関する様々なビジネスの動きこそが生産を規定し、農業を健全化していくはずです。海外農業生産も伸びるだろうし、結果として食料自給率も上がると思います。


脱近代の農業とは


大泉 これからの農業は理性や技術という近代の思想ではなくて、感性で考える脱近代の思想が大切だと思います。おいしい、楽しい、癒されるといった感性に訴える農業。これに気付き、発見し、創造する気風です。もともと昔の地主や造り酒屋、戦後すぐの自作農にはこの気風があったんですよ。

 先ほど、ムラ社会のぎくしゃくした関係にふれましたが、最近、一部の集落営農がコミュニティビジネスに変質してきています。経営者がいて、農産物販売をやったり、集落内の介護ビジネスを立ち上げたり、多様な展開をしている。ニーズに対応できているんです。農業には、社会の発展や人間の要望を満足させる機能があります。最近は農的ライフやスローライフがもてはやされていますし、昔の共同体的な暮らし方、自然とのかかわりや身体性、人間の原体験を提供するような農業もあるでしょう。そこがビジネスチャンスだと思うんですよ。

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