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土門「辛」聞

7000円の衝撃!終わりを告げた、全農主導の減反政策

 それはそれとして買い値を示すには、きちんとした販売方針がなければならない。つまり買い手との間で、どんなコメをいくらで買うかの約束をしっかりと取り付けておかなければならない。しかしながら全国のコメが集まってくる全農は、あまりにもマンモスすぎて集荷の時点ですべてのコメに買い値を示すことは、物理的にみて不可能かもしれないし、産地を選ぶこともできないのだ。

 特に最近は最終価格の8割近くまで仮渡金を払っている。実態的には仮渡金イコール最終精算に近い価格になってきているのだ。これだけの内金水準だったら農家が農協にコメを出してくるだろう。それでなくても全農は、コメが余れば駆け込み寺のようになっている。米価下げ、いや暴落も囁かれる中で、仮渡金水準を下げておかないと全農が過剰在庫を抱えてパンクしかねない。しかも全農は後で説明するようにアップアップの経営実態である。たとえていえば喫水線を超えるぐらいに砂利を積んで航行するボロ船と形容したら言い過ぎだろうか。ひとたび波をかぶれば沈没は避けられない危険水域にあるのだ。決算内容については後で触れよう。

 それにしても全国一律に7000円としたことは、いかにも全農らしい。米価は産地によってマチマチなのだ。新潟コシヒカリ一般なら06年産は額面ベースで1万5000円、青森・つがるロマンなら同1万800円という具合だ。普通なら産地に応じて米価を勘案しながら内金水準を示すものだが、それができないというのは、「全農にもはや農協をグリップ(掌握)する能力がありませんよ」と、内外に宣言したものではなかろうか。


本当の目的は兼業農家の生産意欲を削ぐこと?

 7000円の内金水準。全農の苦肉の策と思うが、どうも全農組織大破綻の第一歩になると見た。本来なら全農は、米穀部門に限ってみれば、売れる産地のコメだけを扱いたいと考えているはずだが、これができないのが全農という組織の寅さん的な構造的問題なのだ。寅さん的、渥美清の「男はつらいよ」という意味である。何よりもコメは全農に集めようと産地に檄を飛ばしていたのは一体何だったのということになる。

 全農に限らず農協組織は、経済事業をとっても購買と販売の2つの事業を抱えている。これまた在りし佳き日には鉄壁のビジネスモデルだったが、これがコメ余りになって裏目に出たのだ。もし買い取り集荷になって、相場より安い買い取り価格を提示したら、力のある農協はそんな価格なら独自で売るよ、あるいはそれなら全農が扱う肥料や農薬は買わないよと「報復措置」を受けかねないのだ。

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