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農水捏造 食料自給率向上の罠

日米の農業基本計画比較から見えた農水職員の“無職責”

 翻って、日本の5カ年計画の中心政策課題となっている自給率目標はどうか。結論から言うと、農水省職員の職権や職責で果たすべき職務が皆無である。さらにひどいことに、職員の努力ではいかんとも変えがたい目標ばかりだ。10年に改定される食料・農業・農村基本計画のベースとなる、50%工程表を精査してはっきりした。自給率向上の有効性以前の問題として、政策立案そのものの無意味さの根源がここにある。

 実例を上げよう(32頁表1参照)。工程表ではおおよそ10年後、自給率50%の大前提となる分母、つまり国民一日当たり供給カロリーは2480kcalになるとする。最新の07年値2551kcalと比べ、71kcalの減少を断定する。全国民の年間供給カロリーに換算すると、5兆4293億kcal減である。その根拠を問うと、「一番は国民の食生活の見直しによる油脂消費抑制。14㎏から12㎏へ減少を見込む。二番目は企業・食品産業の油脂を減少させる取り組み」との回答を得た。何を見込もうが自由だが、国家公務員たる農水職員の職権・職責をどう全うしても達成可能な目標とは言えまい。自分達は何もしないと自ら認めている。外国産依存度、カロリー共に高い油脂供給量を減らせれば、分母を小さく見せることができる小細工でしかない。

 分子も同様だ。1.3%の上昇につながるというコメの消費拡大。「国民が毎食ご飯を一口余計に食べれば達成可能」と旧聞に属する自給率向上ストーリー展開だが、どう考えてもこれも職員の職権・職責で変えられるものではない。目玉は、補助金による小麦と米粉、牛乳の大幅な生産拡大による各2.5%、1・4%、1・5%の自給率上昇。この裏付けとなる消費増を職員の職権で果たせるはずもないし、果たす責任があるとも言っていない。単なる国民負担増に終わりそうな話だ。


自給率は官僚の“無謬性”証明手段

 どんなに無意味なミッションでも、与えられた権限と責任の範囲で達成できる対象がなければ何もできない。計画にあるとおり、自給率向上の前提となる「あるべき消費の姿」の達成は食品企業・消費者責任であり、「生産努力目標」は農業団体・農業者責任と分担が決まっている。農水は両活動に対して税金をばらまくのみ。目標に値しない荒唐無稽な指標であることは置いておいて、そもそも職権・職責を使いようがない目標を立てた時点で、何もできないのは当然だ。自給率といえば何かやっているように見せかけて、これほど官僚の無謬性を証明し続けられる政策をよくも作ったものだ。

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