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ここに盛られた内容は、本来なら農水省が率先して打ち出すべき政策であるが、残念ながら、今の農水省にはもはやそのようなことを期待することは不可能だ。
5月9日の会議に臨時議員として会議に出席した松岡利勝・前農水相は、「農地の『所有』から『利用』へということであるが、実は我々もずっとその観念は持ってやってきていて、まさに究極の策として集落営農みたいな、所有は移転しないが一つのまとまった形にして集落という単位でまとめていくという方向に、大きく踏み切ったわけである。ところが日本人は農耕民族だから、どうしても所有観念がある。それを乗り越えてやろうとしており、我々も秋にまとめるが、いずれにしても農地をどう担い手に集約できるか、そして大きな経営にまとめることができるか、戦後の農地解放以来の最大のチャレンジとして取り組んでいきたい。グローバル化改革専門調査会の皆様方の御意見も秋のまとめには、いいものはどんどん取り入れて、それを反映していきたい」と、農水省内の意見を代弁した。「存在の耐えられない軽さ」と酷評した所以はここにある。集落営農組織なる政策が、本当に世間に通用すると思っているか。こんな馬鹿げた政策しか打ち出せないから経済財政諮問会議に先を越されてしまったのだ。
昨年11月号の本コラムで岩手県北上市上長沼地区の「集落営農試算表」を紹介した。行政と農協が鉛筆なめなめ作成した試算表は、計算根拠がズサンで、米価が少しでも下落すれば、集落営農組織は簡単に崩壊すると指摘していた。崩壊に向けてのスピードは早まっている。
試算表が前提とした米価は、岩手ひとめぼれ1俵1万4000円(玄米60kg)、平均反収8.5俵で、収穫した米をすべて集落営農組織に出荷することが条件だった。
この秋、平年作なら、最低でも1俵1000円の米価の下げは避けられないという見方が日増しに強くなっている。その記事で米価が1000円も下がれば、集落営農組織は米販売部門で赤字を出し、産地作り交付金で黒字計上できる転作作物(大豆)の利益を食い尽し、農家のへ配当、つまり産地作り交付金の分配は雀の涙ほどしか期待できないと指摘した。
実はこの試算は重大の事実を見逃している。集落営農組織へ農家はコメを全量出荷することが前提だが、農家は飯米や縁故米を差し引いた分を出すことが予想される。1俵でも減らせばコメ部門は即赤字になり、大豆への産地作り交付金を完全に食い尽くすに違いない。やがて集落営農組織は解散の運命をたどるしかない。
5月9日の会議に臨時議員として会議に出席した松岡利勝・前農水相は、「農地の『所有』から『利用』へということであるが、実は我々もずっとその観念は持ってやってきていて、まさに究極の策として集落営農みたいな、所有は移転しないが一つのまとまった形にして集落という単位でまとめていくという方向に、大きく踏み切ったわけである。ところが日本人は農耕民族だから、どうしても所有観念がある。それを乗り越えてやろうとしており、我々も秋にまとめるが、いずれにしても農地をどう担い手に集約できるか、そして大きな経営にまとめることができるか、戦後の農地解放以来の最大のチャレンジとして取り組んでいきたい。グローバル化改革専門調査会の皆様方の御意見も秋のまとめには、いいものはどんどん取り入れて、それを反映していきたい」と、農水省内の意見を代弁した。「存在の耐えられない軽さ」と酷評した所以はここにある。集落営農組織なる政策が、本当に世間に通用すると思っているか。こんな馬鹿げた政策しか打ち出せないから経済財政諮問会議に先を越されてしまったのだ。
マーケット・メカニズムに従い、農地制度改革が進む
昨年11月号の本コラムで岩手県北上市上長沼地区の「集落営農試算表」を紹介した。行政と農協が鉛筆なめなめ作成した試算表は、計算根拠がズサンで、米価が少しでも下落すれば、集落営農組織は簡単に崩壊すると指摘していた。崩壊に向けてのスピードは早まっている。
試算表が前提とした米価は、岩手ひとめぼれ1俵1万4000円(玄米60kg)、平均反収8.5俵で、収穫した米をすべて集落営農組織に出荷することが条件だった。
この秋、平年作なら、最低でも1俵1000円の米価の下げは避けられないという見方が日増しに強くなっている。その記事で米価が1000円も下がれば、集落営農組織は米販売部門で赤字を出し、産地作り交付金で黒字計上できる転作作物(大豆)の利益を食い尽し、農家のへ配当、つまり産地作り交付金の分配は雀の涙ほどしか期待できないと指摘した。
実はこの試算は重大の事実を見逃している。集落営農組織へ農家はコメを全量出荷することが前提だが、農家は飯米や縁故米を差し引いた分を出すことが予想される。1俵でも減らせばコメ部門は即赤字になり、大豆への産地作り交付金を完全に食い尽くすに違いない。やがて集落営農組織は解散の運命をたどるしかない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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