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スーパー読者の経営力が選ぶあの商品この技術

無農薬有機栽培と大規模経営を巧みな技術と機械化で両立

 昨今、無農薬有機栽培に関しては、様々な技術や関連資材が氾濫している。だが、たとえば農薬の代替えとして植物活性剤を使うといった対処療法的な技術では、結局高価な資材に頼らざるを得ない。また、薬剤使用を控えることにより新たな作業工程が発生してしまっては、労働コストが高まるばかりである。杉山氏の無農薬有機栽培へのアプローチは、それらとは異なるものである。

 基本的に杉山氏は除草のための作業は行なわない。大切なのは「除草」ではなく「抑草」と考えているからだ。多くの周辺農家がゴールデンウイークに田植えを行なう中、杉山氏の田植えはそれより1カ月ほど遅い。苗の生長を進ませることで、田植え期の深水を可能にし、ヒエの繁茂を阻害しているのである。

 また、米糠とおからの混合物をペレット化し、田植えと同時に水田に散布している。これにより乳酸菌や光合成細菌などの微生物が増え、連鎖的に生物の増殖を促進させるのだ。水面にはアミミドロやウキクサが繁茂し、光を遮断することでヒエやコナギを「抑草」する。生物の多様性が増すほどに生態的なバランスが安定するため、ビオトープを造成したり、魚道を設置して用水路から生物を誘導する試みも行なっている。

 今後も有機物循環の技術を体系化していくことで、より効率的な生産が可能になり、消費者に安心で安全な商品を提供できると杉山氏は考えている。


機械化と有機栽培の両輪で地域環境を再生させる

 現在、杉山氏が管理する農地は50haを越える。無農薬有機栽培と大規模な土地利用型農業は、相反する経営スタイルと思われがちだが、省力化を図った栽培技術であるがゆえ、規模の大きさがその妨げになることもない。最先端の機械を導入し、ダイナミックな技術体系を基盤に効率的な輪作を行なうことによって、むしろ有機栽培の生産性を高めているのである。

 水稲のほか、小麦、六条大麦、大豆、ソバといった品目を輪作しているが、上の図表には杉山氏が理想とする2年3作体系を示してある。水稲収穫後に麦を作付けし、翌年初夏に収穫。その後すぐに大豆を作付けし、同年秋に収穫して水稲に戻るというサイクルである。

 耕起作業にはプラウ、サブソイラを用いるが、水稲連作の場合には、高い乾土効果が得られ、雑草を抑制するプラソイラDXを使用。ハローで砕土・整地し、水稲作の前には、レーザーレベラーをかけてからトラックで鎮圧作業を実施する。収穫には水稲用と汎用型のコンバインがそれぞれ2台ずつ活躍し、乾燥機も6台が揃う。いかにも基本に忠実な機械体系で、多彩な品目を効率的に生産しているといえる。そして、幾種もの耕うん機器や、精密な均平を実現するレベラーこそが、無農薬有機栽培を支え、結果的に増収をもたらしているのである。

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