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『農業経営者』定例セミナー

農業先進国産業論

  • 評論家 叶芳和
  • 第3回 2007年10月12日

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日本は今「第2の明治維新」ともいうべき、大改革の時代に突入している。農業も聖域ではない。生産者米価が1万円を切る情勢では、市場原理が猛威を振るうだろう。国はもう、農家を守れない。市場の支持がなければ経営が成立しない時代、マーケティング能力と経営資源の新結合に秀でた農業経営者が勝つ。呪文のように政府規制に文句を言っている農家は、立ち遅れていくだろう。講師は28年前にこの状況を予測し「農業=先進国型産業論」を提唱した。技術革新や人的資源が蓄積した「先進国型農業」にたどり着くための、農業革命のシナリオを描く!
  • 価格:
    510円

 

【『農業経営者』編集部からのセミナー解説】

 10月12日のセミナーでは、2つのテーマを扱った。まず「これからの農業はどうあるべきか」ということ。講師の叶芳和氏は28年前、「先進国型農業」という概念でこれを示し一世風靡した。そこでは「4つの革命」というシナリオで日本農業が先進国型農業にたどりつく道筋を描いた。そこで今回は、4つの革命がその後、どのように進んだか確かめ、改めて「どうやって先進国型農業になるか」を明らかにした。 

 4つの革命とは、連鎖的に起こる市場革命→土地革命→技術革命→人材革命である。市場革命とは農業分野でも市場原理が貫徹して、農産物の価格が下がることを意味する。28年前、同氏は市場原理にもとづく米価を7000円程度と試算した。そして市場革命が借地による土地の流動化、すなわち土地革命を起し、続いて農業経営に技術と人材の変化を起すと洞察した。

 さて現在、畑作については既に4つの革命が進行し、経営能力のある農家に土地が集まる状況が実現している。一方、水田は遅れていたが、今後余計な規制や介入がなければ、やはり同じことが進む。「選択的減反」により、やりたい農家だけが生産調整して、売れる米をたくさん作った産地に地域配分を多くする調整がなされるべき、と同氏は考えている。

 生き残る農家には、2つの能力??マーケティングと経営能力が必要だ。マーケティングとは市場や顧客のニーズに応えた商品を用意することであり、経営能力とは経営資源の最適な組み合わせで、ニーズに応えた商品を低コストで供給することである。

 もう一つの重要なキーワードは「脱コモディティ化」だ。いずれ自由化すれば、価格で外国産にかなわない農産物もある。だから量で売る商売はやめて価格競争でない勝負をする。同氏は本誌「新時代の挑戦」で㈱セゾンファクトリーのジャム、㈱旦千花の江戸菜などを取材し、それを実感した。

 この時代、研究者のすべきことは何か。「期待利潤率」を高めていくための農業ビジョンの策定、農業改革のありかたを模索することだ。そして食産業の現場を歩いて思うことは、農家は農業のおかれる環境の多様性を主張するが、マーケットにはもっと多様性がある。市場や消費者側からの要求に応えた重層的な迂回生産のありかた、これが同氏が今、注目するテーマだ。

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